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第629話 終着駅めぐり(九州北部編)(2023.11.16)

 終点まで行ったら、今来た道をまた戻るしかないような路線というのが全国にはいくつもあって、鉄道路線を隅々まで究めようとするとそれらが立ちはだかり、時には難儀することになる。

 難度が高いとついつい後回しにしてしまうため、いつしかそのような線区が多いエリアや県が固まってくる。筆者の場合、その最たる例が福岡県だった。

 鉄道以外の交通手段で起点または終点となる駅まで行ってから、その路線を片道乗車するという手はもちろんある。都城からバスに乗って志布志(→駅ログに行き、そこから日南線を完乗とか、土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線~高知東部交通バス~阿佐海岸鉄道~日南線という室戸岬めぐりルートでの大移動(→第509話とかがその実践例。福岡県内のJR線では、筑豊本線の若松線区間(若松~折尾)、香椎線の一部区間(西戸崎~和白、香椎~宇美)などが未乗だったが、それらの終端にあたる若松、西戸崎、宇美の各駅はいずれもバスでのアクセスが可能なため、その駅まで or その駅からバスという行程を組めば、鉄道で全区間を行ったり来たりする必要はなくなる。いつかはそんな組合せを駆使して、若松線や香椎線をと思っていた訳だが、北九州市の「地域公共交通市内1日無料デー」に触発される形で、思いがけず実現の運びとなった。


 2023年の無料デーは、9/3、10/8、11/5の3回(→参考。11/5がいいだろうと考えていたところ、その日に直方で恒例の鉄道イベントが行われる旨をリリースで知り、加えて「直方五日市」なる地域イベントがあることもわかり、当確と相成った。

 午前中に小倉に着いて、12:15発の市バスで若松駅近くの停留所へ。15分ほどで着いてしまった。若松へはJRでも行けるが、同じ時間帯で小倉~折尾~若松を移動すると普通列車(小倉12:24発、折尾乗り換え、若松13:18着)で1時間近くかかり運賃は660円を要する。この日は無料で、15分という速さ。実にありがたかった。

北九州市営バスは、高速道路を経由し、若戸大橋を渡る。洞海湾をここまで見渡せるとは思っていなかったので、驚きだった。戸畑を代表する日本水産の建物もよく見える。
若松駅の近距離きっぷ運賃表。いわゆる「盲腸線」にあたるのは、若松~折尾の若松線のほか、左の青線部の香椎線(西戸崎~宇美)もまた然り。これらをどうクリアするかがかねてからのテーマだった。

 かくして若松12:59発の直方行きで一気に終点まで。筑豊本線の未乗区間のうち、若松~直方がこれでクリアとなった。直方からの帰りは、筑豊電気鉄道で。こちらも無料デーの対象だったので、ありがたく利用させてもらった。筑豊電鉄の筑豊直方~黒崎駅前も初乗車にして完乗のパターン。ただし、黒崎駅前で降りるのは1990.11.19以来・・・この時は西鉄北九州線が現役だったので、小倉方面から乗り当停留場で下車というものだった(→筆者リポート。33年ぶりの再訪である。

若松駅で発車を待つ直方行き。石炭で一時代を築いたエリアを今は819系「DENCHA」が走る。
昭和5年(1930年)当時の「筑豊線」路線図。本線にあたるのは上から左下に延びる若松~折尾~直方~飯塚~で、その他の線は筑豊線の支線になる。貨物専用で旅客用でない線区もあるが、行って戻っての路線(盲腸線)の多さにただただ感服。
20年後、昭和25年(1950年)の筑豊エリアの路線図。貨物線に着目するとなくなったり、新たに延びたりと少なからず変化が見られる。ちなみに「筑豊」の由来は、筑前国、豊前国の頭をつなげたもので、両エリアにまたがる「筑豊石炭鉱業組合」に因む。組合名の冒頭部分が炭田の広域名となり、それが鉄道の路線名にも反映。「筑前は通るが豊前は通らない筑豊本線」の不思議を解くヒントはその辺りにあるようで。
JRの直方駅からそこそこ離れた地にある筑豊電気鉄道の筑豊直方駅。ここもある意味、孤立タイプの終着駅と言える。
高架ホームを路面電車タイプの2両編成が発着する。無料デー効果か、利用客は多かった。
黒崎駅前駅。かつては西鉄北九州線の停留場もあったが、23年前に廃止となった。

11/5に泊まったホテルの部屋から若松方面を一望。中央のライトアップされた吊り橋が若戸大橋。赤が映え、一目でわかるのがポイント。

 11/6は、香椎線を含めた未乗路線・区間めぐりを敢行。当初予定ではバスを活用したプランとし、移動範囲も絞っていたのだが、その筋のショップでJR九州の「鉄道株主優待券」(1日乗車券)を見つけてしまったものだからこれが一変。いつもの乗り降り旅に励むこととなった。

 この日の行程(乗換ベース)は、小倉~赤間~福工大前~(コミュニティバス)~西鉄新宮~西鉄香椎~(徒歩)~香椎~西戸崎~香椎~宇美~長者原~博多~筑前前原~西唐津~唐津~久保田~鳥栖~原田~桂川~直方~折尾~小倉。鉄道どうしの乗り換えができず、アクセスがしにくい終着駅は、西鉄新宮、西戸崎、宇美、西唐津と四つあったが、晴れて乗降済みに。香椎線の残りの区間のほか、未乗区間だった西鉄貝塚線の西鉄新宮~唐の原、唐津線の西唐津~唐津、山本~久保田、筑豊本線の原田線区間(原田~桂川)、新飯塚~直方を乗車でき、福岡県内に限ればJR線はコンプリートとなった。同県で残っているのは、福岡市営地下鉄七隈線、西鉄甘木線、甘木鉄道、平成筑豊鉄道(門司港レトロ観光線含む)。JR九州の株主優待券などを上手に使って、完乗をめざそうと思っている。

西鉄貝塚線の北の終点、西鉄新宮駅。コミュニティバスが予定よりも遅れ、乗換時間は1~2分。ダッシュして10:13発に何とか間に合った。綱渡り的なエピソード=終着駅あるある?
香椎線の片方の終着駅、西戸崎。11時過ぎ(時刻表上は10:58)に着き、折り返しの11:09発に乗車という行ったり来たりパターンで来駅。
駅舎デザインは、かの水戸岡鋭治氏によるもの。モチーフはヨットなのだそうだが、パッと見としては何とも…
香椎線のもう一方の終着駅がこちら。宇美駅周辺の糟屋炭田からの石炭を西戸崎の港へ運び出すというのが香椎線の往年の役割だったのだそうだが、現在の駅舎に炭田を想起させるものは見られない。
宇美には12:22着(実際は2分後)で、当駅でも折り返し。12:35発で今度は博多方面へ。
一日乗車券をより活用すべく、足を延ばして佐賀県へ。西唐津に向かう途中、松浦川と唐津城を撮った。晴れていればまた違った感じになったと思うが、曇天にしてはまずまずか。
15時過ぎ、西唐津に到着。駅の北側には車両基地(唐津車両センター)がある。石炭の積出港まで延びていた貨物線の跡地を活かして整備された。
西唐津駅外観。隣が車両センターで線路が続いていることもあって、終端の駅という印象は薄め。
西唐津でも乗ってきた電車で逆戻り。時刻表では15:02着-15発。滞在時間はどこも短め。

 さて、福岡県内の終着駅(または起点駅)で忘れてはいけないのが門司港駅。こちらは1990.11.20に訪ねたのが最初で、2021年の「どこでもきっぷの旅」でも訪ねている。11/7は、満を持して九州鉄道記念館を見学すべく、2年ぶりに同駅へ。ここも終点まで行ったら同じ路線を戻るパターンの駅なので、今回の旅程で言えばこの手は6駅目。11/5~7の三日間、1日に最低1駅は終着駅という恰好になった。

11/7は肌寒い一日だったがよく晴れた。青空に青いソニック(883系「ブルーメタリック」)が映える門司港駅での一枚。
終点の駅では、車両の横並び写真も撮りやすい。たまたまだが、赤、白、青が並ぶ構図で撮れた。

 記念館に向かう途中、「旧門司駅舎跡発掘調査現場」(→参考記事を通る。門司港駅は1891年の開業から、関門トンネル開通に合わせた1942年の駅名改称までの間は門司駅だったので、発掘現場は旧門司駅ということになる。作業終了後にどのような計画があるのかは不明だが、一部でもそのままの形を残し、鉄道遺産としての展示施設にすればいいのではと思う。今も昔も終着駅という駅の遺構は希少。隣の記念館と一体化する形で整備すれば、より有意義な鉄道施設になるだろう。

旧門司駅の発掘作業現場。レンガの基礎、コンクリート製の円柱などが見える。間近で見学できるので、遺構や建築に関心のある方には打ってつけと思われる。

 九州鉄道記念館には、11時頃から2時間20分ほど滞在。屋外、館内とも程よいボリュームで、疲労感なく観覧、見学ができた。門司港駅に戻ると次の列車までの間隔が空く時間だったため、現駅舎2階などを見て廻ったり、港の桟橋や桟橋通りなどを散策。14:03発に乗り、次の目的地に向かった。

記念館の本館前からの北側の眺望。中央の高層建築はマンション「レトロハイマート」。最上階(31階)は展望室があるが、今回も残念ながらパス。
九州鉄道記念館、中央ゲート。SL「59634」が迎える。帰りに撮れば「ご苦労さんよ~」となる。
門司港駅外観。駅舎としての重要文化財指定第1号というだけあって、いろいろな点で格の違いを感じる。

 11/7は二大テーマとして、九州鉄道記念館とゼンリンミュージアムに行くことに決めていた。門司港で押してしまったため、ゼンリンミュージアムでは閉館までの2時間余りと想定よりも短時間になったものの、企画展「くきのうみ~近代産業の中心地 若松・戸畑・八幡~」を中心に、関心度に応じた見学を十二分にさせてもらった。学芸員(Zキュレーター)の方のガイドも随時いただき、満足度は大。リバーウォーク北九州の最上階(14階)にあるため、まずまずの眺望を楽しめるのがまた佳く、南側、北側ともにその景観を満喫・・・北側の方もこれまたガイドつきでより見聞が深まった。展望室に来た延長で、地図関連の展示も楽しめるスポットという位置付けでもいいかも知れない。入館料1,000円はそうした点も含めて妥当だろう。

ゼンリンミュージアムからの南側の眺め。小倉城を近くから見下ろせるというのがまた心憎い。右の直方体の建物は小倉北署。
こちらが北側の展望。手前に新幹線、奥に蓋井島といった遠近両様の眺めが楽しめる。西側はこの範囲が限度。若戸大橋は残念ながら望めない。
ゼンリンミュージアムを後にして、小倉駅へ。紫川に架かる橋の一つ、常盤橋からの夕景もなかなかだった。

 2023年の2泊以上の旅はおそらくこれで終了か。2024年も難度を問わず、行ったことのない終着駅、乗ったことのない区間をテーマに旅に出ようと思う。

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