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第613話 青春18きっぷスロー旅(前編)(2023.3.15)

 青春18きっぷには長年お世話になっているが、5回分を一人旅で使い切るというのは実はあまりなく、初めて18きっぷで旅をした1989年8月以来のことのような(他にもあったような)・・・といった具合。この年になって、その5回分を一気にという旅に出たのは、我ながら快挙と思っているが、見方によっては無謀とも言える。ともあれ、3/1~3/5(火曜~日曜)に敢行し、無事旅を終えることができた。

 今回の旅の原動力として大きかったのは、ANAの「スーパーバリューセール」に尽きる。全行程を鉄道でというのも悪くないが、飛行機でできるだけ遠くに行き、18きっぷで日数をかけて帰京する、筆者的にこれは一つの理想形。昨年11/29、羽田→熊本をそのセールを使って押さえることができたところから旅の計画は始まった。18きっぷが使えるのは3/1以降なので、2/28に熊本入りして、その日は熊本市内の未乗区間などを周遊。翌日からはやはり九州北部、山陽・中国エリアの「まだ乗っていない路線・区間」を乗り継ぐことをテーマに、スローな列車でゆっくり…というプランを立てる。本数が極端に少ない線区もあるため、乗り損ねるとそこで旅は頓挫。代替案を用意してもよかったが、駄目なら駄目で何とかなるくらいに考え、結果としては概ね予定通りとなった。

 5泊6日の長旅。何とかなることはわかったものの、体力面などを考慮するとそれ以上は厳しい?というのを体得できたのも大きい。

 そんな「ANAからの18きっぷ旅」は、自身としては盛り沢山。一話分で振り返るのは無理があるので、前半(2/28~3/2)、後半(3/3~3/5)の二回に分け、カテゴリ別でご紹介しようと思う。


行程概略

 2/28に搭乗したのは「ANA2413便」。羽田発の時刻は離陸待ちで遅れたものの、天候等の条件がよかったようで、熊本着は定刻通りの12:40だった。好天だったため、窓から見下ろす景色も実に佳く、かつ瞭然。みなとみらい地区、新横浜駅周辺、小田急の海老名車両基地に始まり、富士山の真上、身延川、南アルプス、木曽三川、彦根城、山陽新幹線、岡山駅など、目視でそれとわかるものばかりだった。名古屋、岡山、広島、大分の各空港も認識できたし、遠方では若狭湾や伯耆大山も望めた。隣2席が空いていたこともあって悠々。快適な空の旅だった。

運賃種別「Sバリューセット」・・・羽田→熊本が7,370円!
11:17、富士山の真上を通過
11:33、一目で木曽三川とわかる川の筋が現われる。右から木曽川、長良川、揖斐川。
11:37、彦根付近を通過。左下の彦根城よりも、中央の緑の右に見える白い建物群が目立つ。こちら、エレベーターでおなじみのフジテック本社。細長い一本は「エレベータ研究塔」。
11:40、日本最大の湖を一望。くびれに相当する部分、その最短部に琵琶湖大橋が架かっているのがわかる。
12:01、福山上空。大きなカーブは芦田川。3/3の旅は、この沿川(福塩線)からスタート。
12:03、三原、糸崎港付近。左からの流れは沼田川。3/2はこの川に沿って東へ。その時に乗ったのが山陽本線の糸崎行きだった。飛行機はこの後10分ほど、瀬戸内海の島々の上を航行。
12:19、大分市の中心地に来た。大分川に架かる橋は、上から弁天大橋、舞鶴橋、滝尾橋で、その下にJR(日豊本線、豊肥本線の並行区間)の橋梁が見える。その橋梁の右(東)には大分車両センターが見え、手前で分かれて豊肥本線が下に延びている。3/1は、下から左に向かう感じで豊肥本線の終点、大分へ。
12:24、久住山、九重山付近。阿蘇上空は通らなかった。この後、菊池市上空などを経て南下。東に廻りつつ高度をさらに下げ、再び西に進んで空港へ。S字を描く感じでの着陸だった。

 この時の飛行ルートは、18きっぷで帰る経路に沿う感じだったので、空から予習する恰好となった。その距離は飛行機だと1時間半。それを5日かけて普通列車で移動しようというのだからご苦労な話である。3/1~3/2(18きっぷ2回分)の主な行程は、熊本~大分~小倉~下関(泊)~宇部~新山口~徳山~岩国~福山(泊)。使った路線は、豊肥本線、日豊本線、山陽本線、宇部線、岩徳線となる。このうち、豊肥本線の宮地~緒方、宇部線の草江~新山口、岩徳線全線、山陽本線の海田市~三原が初めて乗った区間。豊肥本線は1990年11月の旅(→参考で乗っているが、緒方→宮地は代行バスだったため、鉄道では今回が初・・・晴れて豊肥本線全線の乗車を果たし、大分県の鉄道路線も完乗となった。

宮地の東隣、波野駅。1990年秋の旅ではバスで駅前を経由した。JR九州管内で最も高い地にある(海抜754m)。
こちらは緒方の西隣、朝地駅。列車で通るのは初めてということになる。次の緒方到着を以って、豊肥本線はめでたく完乗。
3/1は、豊肥本線(オレンジ)で大分入りした後、日豊本線(ブルー)で東へ西へ。「SUGOCAエリア」(ピンクの枠内)の東端、幸崎まで行ってから小倉方面に向かった。
利用期間初日の3/1に使い始め、3/5まで。日付=回数なので使う方も確認する方もわかりやすいのがポイント。
3/2は、下関から山陽本線(青)、宇部から宇部線(紫)、新山口から再び青の順で東へ。岩徳線(緑)経由の列車は徳山から乗った。
岩徳線運賃表。徳山~岩国は990円で、これは山陽本線経由でも同じ。櫛ヶ浜~岩国の間の駅数もともに13で同じだが、所要時間は岩徳線経由の方が長め。徐行区間が多いためと思われる。
岩徳線の川西駅。第三セクターの錦川鉄道は当駅が起点。安泰という訳ではなさそうなので、早めに乗りに行きたいものだが、いつになることやら…
山陽本線の未乗区間にあって、ぜひ降りてみたかったのが西条。「酒都」を標榜する町の玄関駅だけあって、駅舎も立派だった。当地はいずれゆっくり観光したいと思う。
という訳で3/2は山陽線(G)経由で福山まで。海田市~三原の乗車を以って、山陽本線も完乗と相成った。

「推しシーン」「推し駅」など

 ここからは画像メインで。駅探訪の記録は「駅ログ」の方で追い追い。

2/28、熊本電気鉄道での移動中、北熊本駅車庫を撮影。静岡鉄道、東京メトロ銀座線で走っていた車両はここでは現役。(→参考
同じく北熊本駅車庫での元日比谷線車両03系(左)と東急の初代5000系「青ガエル」(右)。このラインナップ、正しく電車博物館である。
熊本電鉄は、北熊本から北が未乗だった。終点の御代志まで平地なのだろうと思っていたら、それなりの勾配区間があって驚く。この八景水谷(はけのみや)駅はそんな小高い地にあって、下り勾配の眺めがなかなか佳い。2/28に訪ねた駅の中ではイチ推しである。
3/1、豊肥本線で東に進む途中(赤水~市ノ川)で見た阿蘇山のカルデラ? 絶景だが、注目すべきはその山肌だろう。
内牧もカルデラ観望ができる駅。停車時間があったのでホームに一旦出て息抜きしていたら、対向からクルーズトレイン「ななつ星in九州」が走ってきた。この列車の特徴の一つはこの大きな展望窓(後方)があるラウンジカー「ブルームーン」。ソファでくつろぐお二方、実ににこやかだった。
豊肥本線は、熊本~肥後大津~宮地~豊後竹田~大分と間で3回の乗り換えを経ての完乗。宮地では9:53着-11:06発と1時間余り時間があったので、阿蘇神社へ足を運ぶことに。周辺案内図では遠くに見えなかったが、実際は片道1.2kmほどだった。何はともあれ、これはお導き。肥後一之宮を参拝できたのは、3/1の最たる成果となった。
3/2、宇部線車窓。海沿いを走るイメージがあるが、こうした景色が広がるのは常盤~床波くらい。ここぞとばかりに撮った。
こちらは山陽本線車窓の周防灘。文字通り「富海」(とのみ)駅の前後でこうした海景が楽しめる。
3/2、山陽本線の旅の一つのお目当てが「スカイレール」。瀬野駅で降りると、同駅隣接の「みどり口」駅から乗車できる。当駅と高低差のある宅地(ニュータウン)を結ぶ交通手段として運営されているが、2023年12月で廃止される予定。この記念スタンプも今のうちということになる。
みどり口を出て、丘陵地をめざして走るスカイレール。終点のみどり中央までの距離は約1.3km。路線の正式名称は、広島短距離交通瀬野線と言う。
終点近くまで来たところで後方を撮影。軌道も高さがあるが、標高もあるのでとにかく見晴らしはいい。
みどり中央駅。160m登った丘陵中腹に建つ。
復路で撮った途中駅、みどり中街。スカイレールは、みどり口、みどり中街、みどり中央の「みどり」3駅を行き来する。運賃はどの駅間でも大人170円均一。
スカイレールという呼称がよくわかる構図。カーブやアップダウンの感じはジェットコースターのようにも見える。外観は新交通システム、車両はゴンドラ風、分類上は懸垂式モノレールという変わり種。タイヤを桁に当てて動くものと思っていたら、みどり口駅に大きな動輪があり、ロープを回して走らせているのだとか(駅構内はリニアモーターで自走)。

旅につきものの「!」とか「?」な件

2/28、阿蘇くまもと空港からJRの最寄駅(肥後大津駅)まで、無料の「空港ライナー」に乗車。13:00発→13:15着のところ、驚異のスピードで13:12に着く(後方の時計がその証拠)。スピード違反とかでなければいいのだが…
熊本入りした日の午後は、市電や熊本電鉄の乗り降りに励む。こちらは田崎橋から乗った健軍町行き。上熊本方面に乗り換えるため、慶徳校前で下車したところ、ホームが驚くほど狭隘でこの圧迫感である。発車時は細心の注意を要する。
田崎橋方面のホームも同様の狭さ。離れたところで待機して、電車が来てから乗るのが良さそうである。
辛島町電停近くにある複合商業施設「SAKURA MACHI Kumamoto」屋上をズームで。マスク着用だが、元気な姿のくまモンを撮ることができた。
こちらはホテルのロビーでボーっとしているくまモン。マスクは着けていなかった。
2/28、通町筋で撮った熊本城。ライトアップされているが、そのトーンは弱め。幻想的と言えばまぁそうなのだが…
豊肥本線の豊後竹田駅。1990年に代行バスで駅前を通った際に撮った一枚をチェックしたところ、駅舎の造りは当時もこうだった。後方の地形のインパクトもなかなか。
豊後竹田駅構内の「PHOTO SPOT」。どの辺りがポイントなのか不明だったので駅員さんに訊ねると、滝が見どころなんだとか。この時は滝も何もなかったので、単なる崖。それでも目は惹く。
3/1、日豊本線で大分から東に向かい、幸崎へ。SUGOCAエリア内なので、駅周辺はそれなりだろうと思いきや、ローカルムードたっぷりで拍子抜け。持て余し気味だったので、早々にホームに戻るといいタイミングで特急「にちりん」が姿を現した。高速通過シーンを期待して動画で撮っていたのだが、減速&停車で肩透かし。いわゆる運転停車だった。
3/1の宿泊先(下関)は全国旅行支援を使って予約。「旅々やまぐち割プラス」クーポンを発行してもらったので、駅前のマックスバリュでまとめ買いすることにした。紙クーポンの状態で使える店は限られていて、マックスバリュはその数少ない店の一つ。夕食用の弁当から、飲料、デザート、さらには当地のちょっとした銘菓までいろいろ買って、無事2,000円分を消化した(会計は2,124円)。あてずっぽうにあれもこれもとやった割に大きくオーバーすることがなかったのは、日頃の買い物で培った感覚によるところ大?
3/2、下関の隣、幡生駅での一枚。通学時間帯なのはわかるが、その数たるや! ラッシュの様相でとにかく驚いた。あとで調べたら、下関双葉高、下関商高など複数の高校が近くにあることが判明。高校前に駅があっても良さそうだ。
飛行機でその上を通った糸崎駅。山陽本線の普通列車で移動していると、当駅で乗り換えを要するのが基本なので、鉄道利用者には名が知れている。名高い駅だが無人駅で、駅周りは至って長閑。「文字鉄」の方から高い評価を受けそうな駅名看板も一興である。

*後半(3/3~3/5)は、次の第614話で。ひとつお楽しみに。

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