相鉄とJRとの相互直通運転が11月30日に始まり、報道等で結構な盛り上がりを見せている。関東エリアの大手私鉄9社の中で、東京都心部への直通運転がなく「神奈川ローカル」な大手だった相鉄。今回の直通化により、大崎、恵比寿、渋谷、新宿の順で山手線とアクセスできるようになり、ローカル大手から一躍、都心大手の仲間入りを果たした。結構なことだと思う。
直通運転に貢献しているのは、西谷~羽沢横浜国大(仮称は羽沢)の相鉄新線区間と、東海道貨物線の一部区間(羽沢横浜国大~鶴見~新川崎)。西谷からトンネル工事を進め、貨物線に接続すればJRとつながるという話で、新線部分を何とかすれば済むような印象を受けるが、これが易々とは行かず、令和になってようやくとなった。
計画の端緒は、2000年1月に運輸政策審議会の答申第18号で示された「神奈川東部方面線」(二俣川~都心方面)。ここで整備を推進すべき路線として指定された後、2005年に成立した「都市鉄道等利便増進法」が後押しとなり、工事が始まった。同法に基づく第1号案件という鳴り物入りだったが、相鉄とJRの直通については当初2015年4月の開業予定が2018年度、さらに2019年度下期と二度にわたって延期。改元を経てという形にはなったものの、2019年の年内という線は間に合った。なお、11月30日に開業する旨、正式な発表が出たのは今年の3月28日。一年前とかに出そうなものだが、8か月前ということでこれも異例な感じ。何はともあれ、満を持しての開業だったと言える。
今回開業した「相鉄・JR直通線」は、相鉄線サイドに分がありそうだが、直通先の埼京線サイドも話題性は十分。ここは一つ「東京モノローグ」の本分に沿って、埼京線視点で大ざっぱにまとめてみようと思う。
1.直通での行先が増えた
相鉄・JR直通列車のメインルートは、海老名~羽沢横浜国大~大崎~新宿。新宿から北方向では、埼京線に入って赤羽、武蔵浦和、大宮、川越も一応来ることになっている。赤羽基準で考えると、南方向ではこれまで大崎がJR線の限界。そこから先は、りんかい線(東京臨海高速鉄道)に入り、新木場へ行くのが直通運転での最遠だった。
相鉄との乗り入れで大きく変わったのは、埼京線の列車が(池袋以南は)湘南新宿ラインのような感じになり、大崎~西大井~武蔵小杉の順で停車するパターンができたこと。かつて筆者が武蔵小杉に通勤していた際は、渋谷で東急東横線に乗り換えてというのがお決まりだったが、今や直通列車を選べば一本である。夢のような展開だと思う。(もっともその頃は湘南新宿ライン・横須賀線上に武蔵小杉駅はなかったから、間違えて埼京線が入ったとしても下車しようがない訳で…)
武蔵小杉と直結したのはいいとして、悩ましいのは降り損ねた場合。武蔵小杉の次は、新川崎でも鶴見でもなく、新駅の羽沢横浜国大・・・営業キロにして16.6km。少なくとも15分は乗ったまま待たないといけない。要注意である。
← こちらは開業初日の羽沢横浜国大駅レポート。ここに載せた以外の写真は、下欄の通り。
乗り換え無用という点では、その羽沢横浜国大のほか、相鉄の大和、海老名にもダイレクトで行ける。ただし、赤羽7:51発の海老名行きに乗った場合、以下のような違いが出てくる。
【直通線経由】
・大和(乗換0回)
9:04着・・・所要時間:1時間13分、IC運賃:987円、距離:57.2km
・海老名(乗換0回)
9:11着・・・所要時間:1時間20分、IC運賃:1,039円、距離:64.4km
【小田急線経由】(新宿乗り換え、最速パターン)
・大和(乗換2回)
9:11着・・・所要時間:1時間20分、IC運賃:682円、距離:50.2km
・海老名(乗換1回)
9:04着・・・所要時間:1時間13分、IC運賃:723円、距離:52.8km
到着時間(所要時間)は、大和と海老名でそれぞれが入れ替わる形となり、運賃、距離に関しては小田急経由が断然優位ということに。大和まで一本かつ少しでも早くということであれば直通線でいい訳だが、300円の差は結構大きい。海老名は新宿の乗り換えをよしとすれば、速さも安さも小田急が上となった。直通運転の恩恵、埼京線利用者にとっては実はあまり…かも知れない。
話はちと逸れるが、この直通サービス、「湘南新宿ライン」のような別称は設定しないのだろうか、と思う。相鉄のキャラクター「そうにゃん」の名を活かすなら、「そうにゃん新宿ライン」がいいのでは?と個人的には思ったりもしている。(=^・^=)
2.本数が増えた
埼京線は通勤時間帯はいいとして、日中時間帯の本数がいま一つというのがこれまでの実情だった。相鉄との直通にあたり、埼京線、りんかい線では、相応のダイヤ改正が行われ、運転本数が拡充。日中時間帯の運転間隔(最大)の一例を挙げると、以下のように変化した。
- 池袋~赤羽:11分間隔→8分間隔
- 赤羽~武蔵浦和:15分間隔→13分間隔
乗る・乗らないは別にして、本数が増えるというのは何につけありがたい話。始発電車の繰り上げ、終電の繰り下げというのもあって、総じて利便性は増した。筆者は、今回の改正を「埼京線ニューモード」と呼ぶことにしている。【参考】ダイヤ改正リリース(PDF)→ JR東日本 / 相鉄
3.埼京線の新展開
ニューモードという意味では、次のような件もある。
- 埼京線区間に、相鉄の車両(12000系)が入線。ただし、基本運用は新宿発着。
- 埼京線用の車両(E233系7000番台)が相鉄線に入ると「各停」または「特急」に。埼京線内での運転は、従来通り(各停、快速、通勤快速のいずれか)。
- 大崎より先に向かう列車は、大崎が分岐点(相鉄での二俣川のような存在)に。
いずれも本稿一話分に相当するインパクトがあることは確か。続編として綴るのもアリかも知れない。
4.今後の期待
相鉄とつながったからには、その「相直」効果を最大限に活かしたいところ。期待を寄せたいものの筆頭は、やはり行楽用の臨時列車だろう。海老名発でも湘南台発でもいいので、土日祝などに川越まで直通する列車を走らせるというのは案外いけるのではなかろうか。相鉄自慢の「そうにゃんトレイン」を使えば言うことなし。列車名はズバリ、「そうにゃん川越号」だ。