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第534話 埼京線ニューモード(2019.12.3)

 相鉄とJRとの相互直通運転が11月30日に始まり、報道等で結構な盛り上がりを見せている。関東エリアの大手私鉄9社の中で、東京都心部への直通運転がなく「神奈川ローカル」な大手だった相鉄。今回の直通化により、大崎、恵比寿、渋谷、新宿の順で山手線とアクセスできるようになり、ローカル大手から一躍、都心大手の仲間入りを果たした。結構なことだと思う。

 直通運転に貢献しているのは、西谷~羽沢横浜国大(仮称は羽沢)の相鉄新線区間と、東海道貨物線の一部区間(羽沢横浜国大~鶴見~新川崎)。西谷からトンネル工事を進め、貨物線に接続すればJRとつながるという話で、新線部分を何とかすれば済むような印象を受けるが、これが易々とは行かず、令和になってようやくとなった。

西谷~羽沢横浜国大の計画図(抜粋)

 計画の端緒は、2000年1月に運輸政策審議会の答申第18号で示された「神奈川東部方面線」(二俣川~都心方面)。ここで整備を推進すべき路線として指定された後、2005年に成立した「都市鉄道等利便増進法」が後押しとなり、工事が始まった。同法に基づく第1号案件という鳴り物入りだったが、相鉄とJRの直通については当初2015年4月の開業予定が2018年度、さらに2019年度下期と二度にわたって延期。改元を経てという形にはなったものの、2019年の年内という線は間に合った。なお、11月30日に開業する旨、正式な発表が出たのは今年の3月28日。一年前とかに出そうなものだが、8か月前ということでこれも異例な感じ。何はともあれ、満を持しての開業だったと言える。

 今回開業した「相鉄・JR直通線」は、相鉄線サイドに分がありそうだが、直通先の埼京線サイドも話題性は十分。ここは一つ「東京モノローグ」の本分に沿って、埼京線視点で大ざっぱにまとめてみようと思う。

11月29日は「りんかい線    方面」だったが…
一夜明けて「りんかい線・相鉄線方面」に

1.直通での行先が増えた

 相鉄・JR直通列車のメインルートは、海老名~羽沢横浜国大~大崎~新宿。新宿から北方向では、埼京線に入って赤羽、武蔵浦和、大宮、川越も一応来ることになっている。赤羽基準で考えると、南方向ではこれまで大崎がJR線の限界。そこから先は、りんかい線(東京臨海高速鉄道)に入り、新木場へ行くのが直通運転での最遠だった。

 相鉄との乗り入れで大きく変わったのは、埼京線の列車が(池袋以南は)湘南新宿ラインのような感じになり、大崎~西大井~武蔵小杉の順で停車するパターンができたこと。かつて筆者が武蔵小杉に通勤していた際は、渋谷で東急東横線に乗り換えてというのがお決まりだったが、今や直通列車を選べば一本である。夢のような展開だと思う。(もっともその頃は湘南新宿ライン・横須賀線上に武蔵小杉駅はなかったから、間違えて埼京線が入ったとしても下車しようがない訳で…)

新宿駅ミライナタワー改札付近での埼京線発車標。渋谷・大崎方面に「海老名」の表示が。
「相鉄線直通 海老名方面」の表記が加わった 新宿駅 1・2番線の案内。ただでさえ行先が多様な新宿駅だが、これでより複雑に。
西大井駅での12000系とE233系の行き違い。筆者のかつての最寄駅だった西大井。こうしたシーンが見られるようになるとは…というのが正直な感想。
という訳で、行先や車両の多様化に伴い、こうした掲示物が登場。西大井はこれで済むが、隣の武蔵小杉は成田エクスプレスも停まるため、より複雑。
武蔵小杉駅停車中の12000系。ホームは島式の一面で手狭なところ、新たな直通列車の登場でさらなる混乱が起こりそうな予感…

 武蔵小杉と直結したのはいいとして、悩ましいのは降り損ねた場合。武蔵小杉の次は、新川崎でも鶴見でもなく、新駅の羽沢横浜国大・・・営業キロにして16.6km。少なくとも15分は乗ったまま待たないといけない。要注意である。

← こちらは開業初日の羽沢横浜国大駅レポート。ここに載せた以外の写真は、下欄の通り。

羽沢横浜国大駅。日中の運転本数は至って少なめ。利便性がいい駅とは言えない?
羽沢横浜国大基準のJR運賃表(きっぷ購入時)。隣の武蔵小杉は310円なのに対し、実際に行こうとすると大回りになる鶴見が170円。駅ホームはないが経路上にある駅ということで、こうした設定に。新川崎(220円)も同様。
11月30日は「都区内パス」を使って新駅へ。羽沢横浜国大での精算は、ルート的には西大井(400円)だが、蒲田(310円)で可。Suica版の都区内パスを試す手もあったが、何が起こるかわからないので紙券にした。(磁気式のフリーパスでは、新駅特有のトラブルがいろいろ発生した模様)
羽沢横浜国大駅発車標。新宿まで一本というのは快挙だと思う。
羽沢横浜国大駅外観。相鉄26番目の駅として開業ということで、JR側の社名表記はなし。駅ナンバリングも相鉄のみ設定。
記念入場券などを買い求める客で初日は大にぎわい。駅構内の広さに救われた?
駅前スペースでは、開業記念イベントとして「ハザコクフェスタ」が開催。オープニングは11時からで、相鉄社長、国交省関東運輸局長のスピーチの後、テープカットが行われた(ことをあとで知った)。それにしても「ハザコク」とはいったい…
開場は10時半だったので、ブースなどを先に見物。鉄道・運輸機構のブースでは、大変参考になる資料をいただけた。
羽沢横浜国大駅に隣接するJR貨物の横浜羽沢駅。11月30日、リニューアル開業し、式典などが行われた。これまでアクセスしにくかった貨物駅だが、羽沢横浜国大駅ができたおかげで来やすくなった。貨物ファン御用達の駅になりそうだ。
横浜羽沢駅開業記念ヘッドマークの掲出も。普段はなかなかお目にかかれないシーンだと思う。
ハザコク駅2番線某所には、某有名倶楽部メンバーによるサインの寄せ書きも。必見?
地下ホーム~西谷トンネル。現段階での相鉄新線はこのトンネル部から西谷駅まで。
ハザコク駅停車中に、相鉄線向けの表示に変更。特急の場合は、その種別が明示される。
地下ホームから見た東海道貨物線接続方面(東側)。JR直通は、左右の方で中央の2線は「相鉄・東急直通線」。こちらはひたすら地下を進み、新横浜駅に直結。
埼京線、東海道貨物線など、JR線を走っている間は、基本的に「各駅停車」。相鉄線(羽沢横浜国大以西)に入ると、特急または各停になる。

 乗り換え無用という点では、その羽沢横浜国大のほか、相鉄の大和、海老名にもダイレクトで行ける。ただし、赤羽7:51発の海老名行きに乗った場合、以下のような違いが出てくる。

【直通線経由】
・大和(乗換0回)
 9:04着・・・所要時間:1時間13分、IC運賃:987円、距離:57.2km
・海老名(乗換0回)
 9:11着・・・所要時間:1時間20分、IC運賃:1,039円、距離:64.4km

【小田急線経由】(新宿乗り換え、最速パターン)
・大和(乗換2回)
 9:11着・・・所要時間:1時間20分、IC運賃:682円、距離:50.2km
・海老名(乗換1回)
 9:04着・・・所要時間:1時間13分、IC運賃:723円、距離:52.8km

 到着時間(所要時間)は、大和と海老名でそれぞれが入れ替わる形となり、運賃、距離に関しては小田急経由が断然優位ということに。大和まで一本かつ少しでも早くということであれば直通線でいい訳だが、300円の差は結構大きい。海老名は新宿の乗り換えをよしとすれば、速さも安さも小田急が上となった。直通運転の恩恵、埼京線利用者にとっては実はあまり…かも知れない。

 話はちと逸れるが、この直通サービス、「湘南新宿ライン」のような別称は設定しないのだろうか、と思う。相鉄のキャラクター「そうにゃん」の名を活かすなら、「そうにゃん新宿ライン」がいいのでは?と個人的には思ったりもしている。(=^・^=)


2.本数が増えた

 埼京線は通勤時間帯はいいとして、日中時間帯の本数がいま一つというのがこれまでの実情だった。相鉄との直通にあたり、埼京線、りんかい線では、相応のダイヤ改正が行われ、運転本数が拡充。日中時間帯の運転間隔(最大)の一例を挙げると、以下のように変化した。

  • 池袋~赤羽:11分間隔→8分間隔
  • 赤羽~武蔵浦和:15分間隔→13分間隔

 乗る・乗らないは別にして、本数が増えるというのは何につけありがたい話。始発電車の繰り上げ、終電の繰り下げというのもあって、総じて利便性は増した。筆者は、今回の改正を「埼京線ニューモード」と呼ぶことにしている。【参考】ダイヤ改正リリース(PDF)→ JR東日本相鉄

2018年3月改正時点の埼京線標準時刻(例)。新宿方面の朝ピークは、7時台12本、8時台11本。
11月30日改正の同駅での標準時刻。7時台、8時台の本数はそのままだが、行先に「海」(海老名)が加わる。日中時間帯も本数は変わらないが、運転間隔は概ね均等になった。
11月30日、池袋駅での埼京線(大宮方面)。山手線?と勘違いしてしまいそうな運転間隔が表示され、大いに驚く。かつて赤羽止まりだった分を武蔵浦和まで延長するとこうした密度に。ありがたい話だ。
池袋駅での埼京線ダイヤ改正関連の案内。埼玉県での話になるが、快速の停車駅変更もちょっとしたニュースになった。
りんかい線(東京臨海高速鉄道)車両にて。こちらの停車駅案内は、ダイヤ改正に伴う刷新はせず、注釈を加える形で従来版をキープ。改正前の快速は、中浦和、南与野、北与野は通過していた。

3.埼京線の新展開

 ニューモードという意味では、次のような件もある。

  • 埼京線区間に、相鉄の車両(12000系)が入線。ただし、基本運用は新宿発着。
  • 埼京線用の車両(E233系7000番台)が相鉄線に入ると「各停」または「特急」に。埼京線内での運転は、従来通り(各停、快速、通勤快速のいずれか)。
  • 大崎より先に向かう列車は、大崎が分岐点(相鉄での二俣川のような存在)に。

 いずれも本稿一話分に相当するインパクトがあることは確か。続編として綴るのもアリかも知れない。

相鉄線直通列車のご案内@新宿駅
新宿駅に相鉄の12000系が入線。折り返し9:27発の海老名行き(特急)に。
代々木駅付近、青山街道踏切を通過する12000系(11月7日の試乗会列車)。相直により、この踏切を通る車両のバリエーションも増えたことになる。「開かず」の時間もさらに増加。
12000系の車内ディスプレイ。海老名(Ebina)行きの列車は途中、恵比寿(Ebisu)に停まる。ややこしい?
大崎駅に停車中の12000系。背景が高層建築物だと、より絵になる(と思う)。12000系は、当駅からりんかい線方面ではなく、神奈川県東部に向かう。
埼京線用E233系車内でのディスプレイなど。あくまで他社線内でのことだが、JRの通勤用車両が「特急」運用に就くのは、JR史上初。
西谷を発車するE233系「特急」。相鉄線を埼京線車両が走る日が来るとは…。西谷駅の格上げ(特急停車化)ももちろん一大トピック。(参考→かつての西谷駅
12000系の「JR埼京線直通」表示。相鉄による相互直通で、正しく「相直」。

4.今後の期待

 相鉄とつながったからには、その「相直」効果を最大限に活かしたいところ。期待を寄せたいものの筆頭は、やはり行楽用の臨時列車だろう。海老名発でも湘南台発でもいいので、土日祝などに川越まで直通する列車を走らせるというのは案外いけるのではなかろうか。相鉄自慢の「そうにゃんトレイン」を使えば言うことなし。列車名はズバリ、「そうにゃん川越号」だ。

相直のデメリットは何と云ってもこのパターン。平日初日(12月2日)も何かしらあったが、3日はとうとう明らかな遅延が発生。

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