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第661話 津軽&道南、キュンパス2日間の旅(2025.3.15)

 2024年に続き、2025年も「旅せよ平日!JR東日本たびキュン♡早割パス」(以下「キュンパス」)が登場。前回は、第636話に書いた通り、日帰りでの大移動だったが、今回は「1日間用」の他に「2日間用」が新たに設定されたため、多少はゆとりのある?1泊2日プランで臨むことにした。

 キュンパスに便乗するように、北海道新幹線区間に限っての「新幹線eチケット(トクだ値スペシャル21)」(→PDFも発売されたことで、旅のメインは津軽~道南で決定。キュンパスが2/13~3/13の平日(3/7以降は利用可能日が追加)に使えるのに対し、トクだ値スペシャル21の設定期間は2/12~3/14だったので、日程的には平日の2日間でそれらが重なるところになる。2月中はまだまだ雪や寒さが厳しいことが予想されるし、ダイヤ改正(3/15)を控えた週は何かとあわただしいだろうと考えて、第一候補は3/5~6に。北海道新幹線を押さえ、キュンパスを買い、4回分の指定席も順当に確保できた。準備としては万端だった訳だが、今にして思えば1週シフトして、3/12~13の方がベターだった?というのはある。

えきねっとで手配した分を券売機で表示。上段は「新幹線eチケット」、下段が「キュンパス」。上段は発券不要のため、下段を選択。
「キュンパス」2日間用の場合、指定券は日付によらず4回分を発券できる。3/5は1回分だったので、3/6に3回分を押さえて、乗り継ぎも上々だったのだが…

 3/5は概ね予定通り。函館到着後、あまりの強風で散策等を断念したほかは至って平常だった。3/6はこれが一転。予定していた時刻と同じだったのは、函館(5:49発)~七飯(6:09発)~と、函館(10:34発)~木古内(11:37着)のみで、他の区間や列車は全て変更に次ぐ変更と相成った。木古内からは新青森、七戸十和田、東京の順で乗り降りするだけだったところ、西日暮里駅付近での「こまち」21号+「はやぶさ」21号(E6系+E5系)の「車両分離」とそれに伴う新幹線各線のダイヤ乱れ(運休&大幅遅延)があったため、まさかの展開に。無事帰って来られたのはいいとして、しっかり指定席をとった筈の「はやぶさ」30号・32号、東京到着後の特急「おうめ」1号がいずれも使えずじまいとなってしまった。席が確保できていない上での長距離移動というのはなかなかハード。身体的負荷、心理的負担は決して小さくなかった。

 第661話は軽めの旅行記でと考えていたところ、そんなこんなでトラブル(またはインシデント)関係があった分、ボリュームアップ。第633話で綴った「〇〇だったが◎◎」な出来事が多かったため、そのパターンでご紹介しようと思う。あまり参考にならないかも知れないが、ひとつご高覧のほどを。


1.前日(3/4)は東京でも積雪、列車の動向が不透明ながらも旅は無事スタート

 旅の前日はできればいつも通りが望ましい。それが見事に裏切られたのが3/4(火)の雪。午前中はどうということはなかったので、買い物の途中でキュンパスと指定券などの一式を券売機で発券した。この時に思いとどまる手はあったが、北海道新幹線の方はどうにも変更が利かない(半額チケットの発売は21日前までetc.)ため、敢行するしかなかったというのが実際。午後になってそれなりの雪が降り出し、積雪も見られたため、3/5(水)朝の列車運行に一抹の不安を覚える。

 結局、何事もなく大宮に着き、「はやぶさ」13号で一気に新青森へ。車両分離の一件が一日早かったら?と思うと微妙な感じはあるが、新青森12:34着なのでおそらくセーフだっただろう。ともあれ、キュンパス旅は無事にスタート。この日のテーマに向け、さらに北上した。

大宮から「はやぶさ」13号で新青森へ。3/5は問題なく定時運行だった。
「キュンパス」と新幹線指定券。指定券が指定通りに使えたのはこの一枚のみ。

2.代行バスの代わりに乗合タクシー、悪天候ながらもきちんと定時運行で助かる

 乗ろう乗ろうと思っていても、思いがけない災害等で急遽不通になり、列車が走らなくなってしまう路線や区間は少なからず… 津軽線もその一つで、2022年8月の大雨で複数の橋梁が流失したことなどを受け、8/4以降、蟹田~三厩(28.8km)での列車運行がなくなり、同区間はそのまま廃止という流れに。筆者としては、1988.9.2に「北斗星」2号(上り)、1990.8.2に「海峡」9号(下り)で、津軽線の青森~中小国(新中小国信号場)は通っているので、列車で通ることが叶わなかったのは新中小国信号場~三厩になるが、やはり線路を全区間乗ってこその完乗だろうと思う。

 列車の運転はなくなっても、鉄道事業が廃止されるまでの間は列車代行バスなどが走る。線路に沿う区間であれば沿線風景を楽しめるし、可能な限り駅の近く(または駅前)に停車するので、駅舎を外から眺める上でも有意義だったりする。今回はキュンパスを使って、その不通区間を辿る恰好。ありがたく活用させてもらった。

 青森から津軽線の普通列車で蟹田まで乗ったら、バスまたはタクシーに乗り換えて三厩方面へ。時刻表(2024.12.16~2025.3.14) によれば、14:04に蟹田に着いた時点での選択肢は、乗合タクシー「わんタク定時便」(14:20発)か代行バス(14:25発)の二つがあった。バスの方は現地の時刻表で知ったため、予約しておいたタクシー(ワゴンタイプ)で。この時の乗客は計5人で、定員ちょうどくらいだった。廃止予定区間を訪ねる旅行者がいても良さそうだったが、女性3人は地域住民。いわゆる「乗り鉄」的な利用は筆者だけだった。

津軽線普通列車(青森13:23発)に乗って、終点の蟹田へ。車両はGV-E400系だった。
青森駅から遠くない市街地でのこの積雪!(13:25頃)。次の油川に着くまで、雪に覆われた住宅等を随所で見かけ、目を見張ることになる。
普通列車の運転は蟹田まで。線路はまだ続いているが、この先を走るのは貨物列車とクルーズトレイン「TRAIN SUITE 四季島」のみ。新中小国信号場~三厩では列車が走ることはなくなった。
蟹田駅前で発車を待つ代行バス(3便:14:25発)。乗合タクシーはバスの後ろで待機。
大平駅の先で、津軽線の線路を渡る高石股踏切(青森から35.6km付近)を通過。ここを通る列車はないので、踏切は名残のような存在。

 天気は良好とは言えず、終始雨模様。景色を見るのも撮るのも難ありではあったが、「わんタク」自体はなかなかの走りっぷりで、正しく「定時便」だった。代行と聞くと心許ない観はあれど、時間に正確であるならその存在意義は増す。蟹田~三厩が廃止となった後も是非継続してほしいものだと思う。

復路は三厩体育館から奥津軽いまべつ駅まで。「わんタク」は5分ほど停車してから発車。

3.三厩駅は通っただけだったが、代わりに温泉に入れた

 津軽線終点の三厩駅到着は、タクシーが15:19、バスが15:29。来た道を戻る場合、この時間帯にバスはなく16:16発のタクシーということになる。雨でなければ駅や周辺で1時間過ごせたと思うが、折からの寒さもあって当駅での降車、乗車は見合わせることに。次善の策として考えていた温泉プランに変えた。

 JRの乗車券類の有効区間は三厩駅までではなく、次の三厩体育館までだったので、それを活かした形。待ち時間(15:22着-16:13発)は、体育館近在の「みんまやよしつねの湯」で主に過ごした。さしづめ「湯っくり&湯ったり」プランといったところ。我ながら名案だったと思う。

外ヶ浜町三厩健康増進センター「みんまやよしつねの湯」。大人料金は400円。
「わんタク」車内から三厩駅の一部を撮影。「津軽半島最北端の駅」だが、正式に廃止されるとその看板は蟹田駅が受け継ぐことになる。

4.温泉は思いがけずアツアツ、手足の冷えはひとまず解消

 「みんまやよしつねの湯」は人工温泉かつ「炭酸カルシウム温泉」。効能や成分の表示があるタイプの温泉ではなかったが、とにかくアツアツだった。浴槽の温度は43℃台後半。全身浴をするとどうかなりそうだったので、基本は足腰どまりにして、瞬間的に肩まで浸かる入り方にした。

 3/4は雪効果もあって、東京は冷え冷え。3/5も道中で手足が冷えてしまっていたので、温泉で冷えを払拭できたのは何よりだった。


5.函館は湿った雪の予報、風も強かったが雨で済んだ

 週間予報で3/5~6が出るあたりから前日の3/4まで函館の天気はずっと気にしていて、最高気温こそ当初より幾分上がったものの、天気の方は旅行日が近づくにつれて厳しさを増し、3/5朝になると「雪」(水分たっぷり系)予想で確定に。北海道新幹線で移動している間は特に不安はなかったが、在来線区間は果たして?というのはあった。

奥津軽いまべつから乗った「はやぶさ」13号は、「Magical Journey Shinkansen」。東京ディズニーシー「ファンタジースプリングス」をテーマにした特別車両で、対象はE5系U6編成。「アナと雪の女王」デザインの車両に関しては、雪の中を疾走すれば演出的にはバッチリ。
終点の新函館北斗ではちょっとした撮影タイムに。10両のうち半分ほどは近くで撮れた。こちらは10号車後部。
「Magical Journey Shinkansen」は6月上旬頃まで運転。ポスターには1号車(東京方)側面が使われている。

 実際はそれほどの降雪は見られず、函館には定刻通り18:16に到着。ただ、ホテルに行くまでの400m足らずが思うに任せず、断続的に猛烈な風が吹くものだから難儀した。この時は雪ではなく、一応傘を使った方がいいレベルの雨。傘が飛ばされそうな勢いだったが、吹雪でなかったのはまだ良かったと言える。

ホテルに向かう前に函館駅の券売機で保存版の乗車券を購入。3/14を以って営業を終えるJR北海道の5駅(東滝川、東根室、雄信内、南幌延、抜海)が入るように考えたのがこの組合せ。3/15以降、券売機からこれら5駅を指定することはできなくなった。
雨と強風の中、開港通りを歩く。直進すれば東横インだが、今回は市電が見えるホテルへ。

6.嵐で市電のプチ旅は見送り、短時間ながら翌日にチャンス

 天気が良ければチェックイン後にちょっとだけ市電に乗って、ベイエリア辺りをブラブラする気でいた。が、あまりの風(時々雨)であえなく断念。翌日もその時間はなさそうだったが、後述のあれやこれやでプチ観光が実現した。予定通りに行かなかった故のチャンスと言ったところ。こうした某転じて某な感じが旅の醍醐味かも知れない。


7.本数が限られた区間の一つを何とかクリア・・・予定していたもう一つは倒木で叶わなかったが、普通列車のレア運用に乗る

 3/5は津軽線完乗からのJR東日本全区間達成。次の日は函館本線の二つの支線を乗り通すことで、JR北海道も完乗となる予定だった。何事もなければ、函館を5:49に出る森行きの普通列車でその二つを一気に果たせる筈が、函館を含む渡島エリアで前日に吹き荒れた風のせいで、めざす支線の一部区間で倒木が発生。今回の旅でのJR北海道完乗はお預けとなってしまった。

早起きして、5:49発の列車に乗り込む。行先は「森(藤城・駒ヶ岳)」。倒木がなければ(藤城・砂原)だったのだが…

 函館本線の七飯~大沼は、新函館北斗などを経由する本線(西側)と、途中駅のない藤城支線(東側)と二つのルートがあり、藤城支線の方は走行する列車が少ないことで難度が高め。1990.8.3、筆者が初めて函館本線を北上した際は、函館から大沼公園まで普通列車、大沼公園からは特急「北斗」で長万部へという行程だったので、藤城支線は経由しなかった。実は当時の特急列車は速達性重視で藤城支線を通っていたため、素直に函館から「北斗」に乗っていたら、難しい方をクリアできていたことになる。

「新函館北斗駅に停車しない列車」は4本。16:14発の七飯行きを除き、3本は藤城支線経由ということになる。ちなみに函館方面の列車で藤城支線を通る列車はゼロ。

 その後、北海道新幹線のアクセス駅として新函館北斗が開業(かつての渡島大野駅を一新)してからは、特急の全列車は本線経由に。何とも皮肉な話だと思う。

 大沼~森もルートは二つあり、山側の大沼公園、駒ヶ岳を経由する本線、海側の鹿部、渡島砂原を通る砂原支線を選択できる。選択肢には違いないが、砂原支線は普通列車のみで、これまた本数が限定的なため、しっかり計画を立てないとクリアし難い。藤城支線からの砂原支線という普通列車はこれ以上ない一本だったのだが、倒れた木で線路が塞がれてしまったのでは致し方なし。森行きの列車は大沼で切り離しなどを行った後、本線経由での運行となった。

道南エリア路線図。七飯~大沼~森は、二手に分かれることが何となくわかる。通常なら、函館5:49発の列車は七飯から先、大沼、鹿部、渡島沼尻、掛澗、尾白内、東森、森の順で停車する。今回は、七飯、大沼、森という「速達タイプ」だった。
(参考1)「藤城・砂原」ルート
(参考2)「藤城・駒ヶ岳」ルート

 普通列車なので、通常であれば大沼公園、赤井川、駒ヶ岳、森の順で停車するところ、途中駅での着・発の設定がないため、大沼を出たら次は終点という運用に。特急停車駅(大沼公園)も通過してしまうのだから、知らずに乗った人がいたらさぞ驚いたことだろう。期せずしてレアな乗車体験ができたという点では有意義だった。

函館~大沼は3両(キハ40-1803+1767+1800)での運転。大沼で後ろ2両を切り離し、身軽になって森へ。
予定よりも30分以上早く森に到着。キハ40形の乗り納めという意味ではあまりありがたくない時間短縮だった。

 ちなみに函館本線でのキハ40形の運転は、3/14を以って終了とのこと。引退近い車両の乗り納めができたのもまた巡り合わせ、お導きだったのではと思う。

JR北海道の公式リリースには掲載がなかった?函館本線(函館~長万部)でのキハ40定期運用終了の告知ポスター。なかなかの名文だと思った。
ポスターは車内にも。複数のバリエーションがあり、どれも名作だった。まとめてパンフレットにしたら買う人は買うと思う。

8.森からの復路は急遽「北斗」2号に乗ることに・・・特急料金は追加出費だったが、おかげで市電乗車&プチ観光ができた

 とりあえず森まで来れたのはいいとして、次はいかにして函館に戻るかで悩む展開に。本来なら砂原支線、本線経由の函館行き(7:58発)に乗れば済むところ、倒木の除去等に手間取ったようで、時間が経つごとに見込みが変わり、「約55分遅れ」になったり、それでもなお動かなかったりとヤキモキが続いた。3/6も函館で泊まる旅程であれば、ひたすら待つこともできただろうが、この日のうちに新幹線を乗り継いで帰京する手筈だったので、悠長なことは言えず。救いとなったのは特急「北斗」2号(8:50発)で、これがきちんと定時運行だったことで、函館に早めに戻れた。

森町の中心駅、森駅。特急は全列車停車する。
(参考)「北斗」2号のルート・停車駅
3/6朝の発車標(推移)。7:58発の函館行きが時間とともに予定や順番が変化していったのがわかる。最終的には砂原・鹿部経由ではなく、駒ヶ岳経由で運転されたのだとか。函館に着いたのは10時半頃(推定)。
「北斗」2号に乗ることにしたため、森駅周りで過ごす時間がたっぷりとれた。駅の東側には「森桟橋跡」があり、線路の向こう側には「明治天皇上陸地跡」を示す記念碑がある。「天皇本道御巡幸」は1881年9月の話。
記念碑をアップで撮影。この位置だと陸地に建っているように見えるが…
森駅構内の跨線橋から海側を撮ったところ、記念碑は波が打ち寄せる場所に建っていることが明らかに。満潮時に限ったことなのかどうかは不明。
駅周辺を散策している間はそれほどでもなかったが、ホームで特急を待っている時分には結構な雪に。函館~森で乗車したキハ40-1803も雪に洗われるような状態に。

 この日、道内での移動に使ったのは「はこだて旅するパスポート」。鉄道のフリー区間は、JRが函館~森(支線含む)、函館市電と道南いさりび鉄道は全区間というもので、上手に使えばかなりおトクな一枚だった。「北斗」は別に特急券を足せば乗車できたので、追加出費にはなったが、フリーきっぷの使い方としてはまずまず。「はこだて旅するパスポート」は道南エリア2市4町の函館バスも乗り放題だったので、特急が来る前のバス(森駅前8:25発→函館駅前9:47着)で移動する手もあったが、雪道や市街地での遅れが想定されたので見送った。ともあれ函館に9:33に着いたのは大きく、おかげで市電に乗ってのベイエリア観光も短時間ながら果たせた。

「はこだて旅するパスポート」と「北斗」特急券。2,690円(1日間用)+1,160円(全席指定)で、これだけ見ると額はそれなり。
9:33、函館に到着。救いの特急列車だった。

 函館市電は何度か乗っているが、通しで乗ることが少なく、一旦降りた後で隣の停留場まで歩いて乗ってというパターンもあって、乗車していない区間がチラホラあった。昨年11月、クルーズ船で函館に寄港し、日中に観光した際にも乗ったが、十字街~末広町の一区間が残った状態で当地を後に。もっとも11/26までは末広町電停は仮設状態で、その翌日以降、北西方向に約180m移動した上で本設にシフトとのリリース(→参考が出ていたので、11/7時点で十字街~末広町を乗った場合はその180m分が浮く形になるところだった。乗るなら本設後だった訳で、3/6に函館駅前~末広町を乗車したことで晴れて市電完乗!と相成った。

函館駅前9:43発で末広町へ(9:53頃着)。函館どつく前方面は屋根なしだが、逆方向(湯の川方面)には屋根と防風板が付いているのが本設の際のポイント。
桟橋界隈から十字街に向かう途中にある「日本最古のコンクリート電柱」。遠目だと少しわかりにくい。
コンクリート電柱を見上げた図。形状は「角錐形」に分類される。珍しいタイプなのだそうで。
建てられたのは1923年10月。今なお現役というところが凄い。高さは10m、底辺は47cm四方、上辺は19.5cm四方のため、上に行くほど細くなるのが特徴。
十字街交差点の一隅に建つ「操車塔」。1939年に設置され、交差点での信号、ポイント切り替えを塔内の一室から遠隔で操作したのだとか。1995年にその役目を終え、今は鉄道遺産のような形で保存されている。

 ホテルは11時チェックアウト。荷物を部屋に置いたまま身軽に動けたからこその列車移動であり、プチ観光だったと思う。


9.函館発の列車に二度乗車・・・行程としては一部重複するも道南いさりび鉄道の列車を通しで乗車

 森からの復路では、函館まで戻らずに一つ手前の五稜郭から道南いさりび鉄道に乗り換えるプランも当初は考えていた。その場合、チェックアウトを済ませ、荷物も全て持って動く形になる訳だが、結果的にはチェックアウトを後回しにして正解だったと言える。函館駅から列車に乗るのは5時台に続き、二度目。次は10:34発の木古内行き普通列車に乗った。函館~五稜郭は午前中だけで3回通ることになったが、列車タイプで言えばJRの普通列車、特急列車、道南いさりび鉄道の普通列車と「三車三様」。乗り心地はそれぞれで、楽しめた。

木古内行き普通列車(函館10:34発)。道南いさりび鉄道所属のキハ40形はまだまだ現役。1807号は懐かしの国鉄色。
海沿いを走る区間が長めなのが道南いさりび鉄道の一つの特長。茂辺地~渡島当別では函館湾を挟んだ対面に函館山が望める(11:10頃)。

 五稜郭からは道南いさりび鉄道に入り、西に向かう。前回(2014.4.5~6)乗った時はJR江差線(→「駅ログ」)。第三セクターになってからの乗車は初めてだった。終点の木古内まで乗り通し、道南いさりび鉄道もこれで完乗となった。

函館から約1時間、木古内に到着。駅名標は道南いさりび鉄道仕様になっている。
JR時代の駅名標はこんな感じ。木古内駅の待合スペースには、三セクに移行する前の同駅の関連展示「きこない鉄道コレクション」があり、往時を振り返ることができる。(参考:江差線時代の木古内駅→「駅ログ」)

10.木古内からの新幹線は約30分の遅延だったが、とにかく本州(新青森)には着いた

 番狂わせはあったが、木古内まで来たことで、あとは北海道新幹線~東北新幹線で帰るばかり。新青森までは「新幹線eチケット(トクだ値スペシャル21)」、新青森からは例の「キュンパス」で、降りて乗っては必要になるものの基本的には楽々の筈だった。

 木古内を13:01に発つ「はやぶさ」28号に乗るべく新幹線駅へ。早足で来たのだが、何故か改札外の待合室に人がそれなりにいて、何事?となる。改札前のディスプレイには新幹線の運行情報が出ていて、上り方面は「遅延・運休」。概況欄には「上野駅~大宮駅間での車両点検の影響で・・・」とある。その場で足を止めていたら駅員さんが近づいてきて、車両トラブルの実際が車両分離であることなどを教えてくれた。新青森までは行けるがその先はわからず、運転再開の見通しも不明とも仰る。連結が外れてしまった「こまち」「はやぶさ」がそれぞれ動き出し、運転が再開されたのは14時半過ぎだったから、13時時点では確かにそういう話になる。

木古内駅改札前で運行情報を見て、思わず息を呑む。車両分離と聞いた時の筆者の反応は「まさか」と「またか」だった。

 とりあえず「新幹線eチケット」で予約していた「はやぶさ」28号が走ることは走るので待つことに。しばらくして新函館北斗を発車したとのアナウンスがあり、その頃合いで改札を通った。駅構内を見物しつつ、ホームへ。約20分遅れと出ていたが、次の瞬間に約25分に延び、最終的には28分ほど遅れての発車となった。もともとは東京行きの列車だったが、新青森止まりに。筆者はICカードで改札を出て、次は「キュンパス」で入り直す段取りだったので、行先に関しては問題はなかった。
新青森着は時刻表では13:50だが、この時は14:19頃。30分のビハインドだった。遅れはしたものの、新青森に着きさえすればあとは何とか… 到着時は割と楽観的な気分でいたが、時間が経つにつれそうも言っていられなくなるのだった。

改札を通った直後は「おくれ約20分」だったのだが、数分後には「約25分」に。新函館北斗での折り返し準備が遅れたことによる変動だった。
13:25に「列車が到着します。」の表示が出る。「はやぶさ」が着いたのはこの3分後だった。
「はやぶさ」28号はE5系ではなくH5系。ラベンダー系の帯色「彩香パープル」を間近に見ることができたのは一つの収穫。
東京行き改め、新青森止まりとなった28号。降車したのは14:20頃。

11.指定席を押さえていた30号、32号はともに運休・・・新青森駅でまさかの足止めを食うも60号でとにかく帰路につくことはできた

 トラブル発生が上野~大宮でなく、大宮以北であればまだマシだったと思われる。新青森から秋田に出て、羽越本線などで新潟まで行ければあとは上越新幹線でという手もあるからだ(14時過ぎの段階で成り立たないが)。東北・北海道新幹線系統だけでなく、上越も北陸も影響を受けたため、どっちにしても運転再開を祈るしかない。新青森駅は改札の中も外も案の定の混乱状態だったが、幸いにも全面的な運休ではないことはわかった。

 上りの「はやぶさ」は、30号(14:09発)、60号(15:17発)の表示が出ていて、ひと安心。30号については次の七戸十和田までの指定券だったが、運休でさえなければその席につくことはできる。何時に入線して何時に発車するかはわからなかったので、とにかくホームで待機。30号がようやく現われたのは14:35頃で、出発準備等を経て車内に入れたのは14:53頃だった。

とりあえず運転は再開され、「はやぶさ」30、60が走ることはわかった。
14:33頃、待望の30号が入線する旨の表示が出る。これがきちんと動いてくれれば御の字だったのだが…

 前日、奥津軽いまべつ~新函館北斗で乗った「Magical Journey Shinkansen」だったのはちょっとしたサプライズ。だが、さらなるサプライズが起こる。動くものと思っていた30号が突如運休扱いになってしまったのだ。ある意味、Magicalな展開だったが、笑える話ではない。隣の11番線には下り「はやぶさ」303号が15:18頃に到着し、それが折り返しで60号に。その60号への移動を余儀なくされたのは実に15:41頃だった。30号はいつまで経っても動く気配がなかったので、何か不具合でもあったのだろう。「Magical Journey Shinkansen」の席で待っていた時間、45分以上ということになる。

「はやぶさ」30号は「Magical Journey Shinkansen」。急遽取り止めになったのは魔法のせい?
30号車内から「はやぶさ」303号の到着シーンを撮影。この後、60号になり、30号の乗客も取り込んでから発車。

12.「はやぶさ」60号の大宮着は1時間後と大幅な遅れながら臨時ホームの到着、上野行きに変更というレアな列車に

 指定券通りの列車ではなくなってしまったが、同券があれば仙台~新青森では空席利用が可。60号の指定券を持つ乗客が来たらその時はまた席を移れば済む。そんな訳でモヤモヤした状況の中、行けるところまでは60号で行こうという話になる。
停車本数が少ない七戸十和田での降り乗りができるいい機会だったが、七戸十和田まで押さえていた30号、七戸十和田から東京まで乗る予定だった32号ともに運休となってしまってはどうしようもない。東京方面に帰れるだけいいと考え、席についたり離れたりの長距離移動となった。

16:09頃、七戸十和田に着く手前で一時停止。外を見たら630kmちょうど地点だった。ちなみに東京~七戸十和田の営業キロは668km。いったいどこ基準なのやら?
18:25、郡山を通過。乗車予定だった「おうめ」1号は5分後に東京を出る。(無念さを表す記念に撮った一枚)

 この日の「はやぶさ」60号は、筆者の記録では次の通り。新青森(15:44発)~七戸十和田(16:20発)~八戸(16:34発)~二戸(16:46発)~盛岡(17:10発)~仙台(17:59発)~大宮(19:10着)。本来の時刻は、新青森(15:17発)~八戸(15:42発)~盛岡(16:17発)~仙台(16:57発)~大宮(18:07着)~東京(18:32着)なので、新青森での27分ほどの遅れが徐々に拡大し、大宮時点で1時間余りの遅れになっていたことになる。停車予定のない七戸十和田、二戸に停まったり、七戸十和田、仙台、大宮の手前で信号待ちがあったり、古川付近での徐行があったりで斯様な結果に。鉄道ファン的に一興だったのは、大宮駅の到着が臨時ホーム(15番線)だったことと、大宮に着くまでは東京行きだったのが急遽上野止まりに変更になったことか。60号は定期運転ではないので、その辺は流動的。臨時の上り「はやぶさ」での上野行きは決して珍しい訳ではなかったりする。

東京行き改め上野行きに。このまま上野まで行くのも面白かったかも知れないが、ラッシュ時間帯にわざわざになるのでこれまでに。
19:12、「はやぶさ」60号は1時間遅れ程度で済んだという見方もできる。「はやて」546号に至っては「約2時間以上」。もっとも「はやて」が関東エリアに来ることがそもそもイレギュラーではある。

 筆者は「はやぶさ」32号で東京まで乗った後、3/14の運転を最後に設定がなくなる特急「おうめ」で立川まで行くつもりでいた。その「おうめ」1号は東京18:30発だったので、19時過ぎに大宮という時点でどうしようもない訳で、このまま降りて通常モードで帰宅することに。臨時ホームだったので、人出はそこそこだったが、他の番線(特に下り方面)はあふれんばかりの人で、当然のことながら待合室や改札周辺もごった返しの態だった。そんな人波を抜けつつ、新幹線改札を出る。発車標は軒並み「おくれ」の文字が並び、列車の順序も乱れていた。帰って来られたのだからよしとしたいところだが、行程や予定が狂ったことによる機会損失は少なからずある。

臨時ホーム(16番線)に停車中の回送列車。その後方の下り方面ホーム(17・18番線)には大勢の乗客が。
17・18番線の発車標。「なすの」の40分遅れはまだいい方で、「はやぶさ」105号は「Delayed over 2hours」。発車順もおかしなことになっていた。
下り列車をひとまとめにした発車案内はこんな具合。白が定刻、黄が発車見込で、見込の昇順になっているのでわかりやすい。大宮で行先が分かれるとは言え、かなりタイト。この範囲で最も影響が小さかったのは「とき」339号(28分遅れ)。
上越・北陸の下り(18番線)発車標。こんな状況下でもガーラ湯沢行きが動くというのは信じ難いところだが…
改めて東京方面をチェック。「はやぶさ」「はくたか」「はやて」が並ぶというのはまずない。ダイヤの乱れ加減がよくわかる一枚になった。

 3/7以降分を買っていたパス利用者に対しては、払い戻しや利用可能日のシフトなどの救済措置がとられた一方、最も痛手を受けたと思われる3/6の利用者に対しては何の対応もないまま。1998年元日向けの企画乗車券「お年玉フリーきっぷ」の時は、当日の東北新幹線のトラブルで同券利用者の多くが動けなかったとの理由で、翌日(1/2)も無条件で利用可とする良心的な取り扱いがあっただけに、今回も同様の救済策があっていいように思う。期間延長分(3/28までの平日)のいずれか一日、改めて使えることを願いつつ。(長文ご清覧、ありがとうございました。)

「お年玉フリーきっぷ」のチラシ。「新幹線まで乗り放題」の企画乗車券は当時のJR東日本ではあまり設定がなかった(と思う)。(参考:旅の記録など→第9話
3/6に乗り損なった特急「おうめ」1号。営業最終日の3/14、新宿駅に行き、存分に見物、撮影させてもらった。乗車できなかったのがつくづく悔やまれる。

メモ:行程概略

(3/5)
最寄駅から・・・
大宮(9:59発)~新青森(12:34着):「はやぶさ」13号
新青森(12:46発)~青森(12:53):奥羽本線普通列車
青森(13:23発)~蟹田(14:04着):津軽線普通列車
蟹田駅(14:20発)~三厩体育館(15:22発):わんタク定時便(津軽線不通区間代替交通)
三厩体育館(16:13発)~奥津軽いまべつ駅(16:39着):わんタク定時便(津軽線不通区間代替交通)
奥津軽いまべつ(17:01発)~新函館北斗(17:47着):「はやぶさ」25号
新函館北斗(17:57発)~函館(18:16):普通「はこだてライナー」

(3/6)実際
函館(5:49発)~森(7:11着):函館本線普通列車(藤城支線、駒ヶ岳経由)
森(8:50発)~函館(9:33着):「北斗」2号
函館駅前(9:43発)~末広町(9:52着):函館市電5系統
十字街(10:10発)~市役所前(10:13着):函館市電5系統
函館(10:34発)~木古内(11:37着):道南いさりび鉄道普通列車(木古内行き)
木古内(13:29発)~新青森(14:19着):「はやぶさ」28号
新青森(15:44発)~大宮(19:10着):「はやぶさ」60号
・・・最寄駅へ

(3/6)当初プラン
函館(5:49発)~森(7:44着):函館本線普通列車(藤城支線、渡島砂原経由)(大沼6:26-40)
森(7:58発)~五稜郭(9:51着):函館本線普通列車(渡島砂原、新函館北斗経由)(大沼8:58-9:21)
五稜郭(9:58発)~七重浜(10:02着):道南いさりび鉄道普通列車(上磯行き)
七重浜(10:44発)~木古内(11:37着):道南いさりび鉄道普通列車(木古内行き)
木古内(13:01発)~新青森(13:50着):「はやぶさ」28号
新青森(14:09発)~七戸十和田(14:23着):「はやぶさ」30号
七戸十和田(14:53発)~東京(18:04着):「はやぶさ」32号
東京(18:30発)~立川(19:16着):「おうめ」1号
立川(19:32発)~西国分寺(19:38着)
・・・武蔵野線方面へ


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