Skip to content

第659話 消えゆく北海道の旅客駅(2025.2.15)

 国鉄時代に栄華を極めた北海道の鉄道路線。1987年4月のJR発足を前に赤字路線の廃止が進み、ピーク時に比べて路線延長は減ったものの、駅の数に関してはまだまだ多かった。その当時の「JNR編集 時刻表」(1987年4月号)の路線図=索引地図で数えてみると、道内のJR北海道の駅は全部で566駅。ただし、同年4/1を以って仮乗降場や信号場から旅客駅に「昇格」した駅はまだ路線図に載っていなかったので、実際はもっと多くの駅があった。とにかく北海道の広さを反映するような駅数だったことは事実。同年度から学生生活を始めた筆者は、そんな路線図に見入っては北海道の旅にいつ行くか、どう廻るかを思案しつつも、その数に圧倒されたものだった。

1987年4月、「新旅客会社スタート」(=JR発足)時の時刻表から北海道の「索引地図」。3/22までの士幌線(帯広~十勝三股)、3/29までの羽幌線(留萌~幌延)も載っているが、それらを除いても当時の北海道は鉄道王国だったことがよくわかる。廃線になるとわかっていたら、それらを優先すべきだったと思う路線が多々…

 生まれて初めての北海道は、青函連絡船「羊蹄丸」で入り、寝台特急「北斗星」で出るといったもので、この時は函館が北限。「北斗星」の車中泊につき、旅行日は2日間限りという弾丸ツアーだった。これが1988年の9/2~3の話(参考→第417話。道内で最初に利用した駅は函館ということになる。その後は、1990年8月の北海道一周(参考→「平成2年の鉄道風景(北海道編)」)、1991年2月の室蘭~札幌などの旅を経て、JR北海道の駅で乗り降りしたのは2025年2月時点で56駅というところまで来た。駅を利用したものの残念ながら廃止になってしまった分も少なからずあり、それらを足すと65。年月を経ればある程度の数に達するものだとつくづく思う。

青森港14:15発の羊蹄丸で約4時間。函館港到着後に撮った一枚。その外観に歴史の長さを感じる。
1988.9.2、函館21:46発の「北斗星」(2号)で東京方面へ。1時間ほどで青函トンネルに入り、トンネル内の駅「吉岡海底」を通過。走行中のトンネル内という条件下で、このように駅名標が(辛うじて読めるレベルで)撮れたのは奇跡的。

 せっせと励んで旅してきた北海道だが、路線の全て、または一部がまるまる廃止になってしまうケースが増え、加えて「ご利用の少ない駅を見直し」(JR北海道のリリース上の常套句)云々により、間引きされるように駅がなくなることも近年は顕著に。2025年3月のダイヤ改正でも宗谷本線の雄信内駅、南幌延駅、抜海駅、根室本線の東滝川駅と東根室駅が廃止になることが決まっているため、3/15時点で322→317駅と道内のJR北海道の駅はさらに減る。かつては高く感じたハードルが気付けば低く見える状態に。80駅に達すれば全体の4分の1ということになるから、その気になればといった段階まで来た。廃止によってその目標が自動的に容易になるというのは決して喜ばしい話ではない。行ける時に行っておくというのが「鉄則」だろうと思う。

 過去の北海道旅行でトピック要素が多めのものについては、一話分を使って紹介してきたが、路線や駅がなくなる前に…の関係が実はメイン。その他の分は専ら「駅ログ」に綴っている。自分なりに駅の見納めや撮り納めはこなしてきたように思うものの、「今は地図にない駅」についてどれだけ記録できたかはきちんと見返してみないことには不確かではあった。

 という訳で、ここ12年程の間に廃止された道内の駅の中から、移動途中で撮った分を含めて明確にその駅とわかる分をピックアップしてみることに。自然災害等で部分的に不通となったことですでに列車の運転がなくなり、代行バスでの道中で撮ったものを外すと、43駅に上った。これに来月の廃止を控えた5駅のうち、雄信内駅、抜海駅、東根室駅を合わせた46駅・・・路線別にフォトギャラリー形式(キャプション最低限)でご紹介する。


江差線

江差線の全区間は五稜郭~江差(約80km)。このうち、木古内~江差(約42km)が2014.5.11を以って廃止に。筆者はその年の4/5、4/6に廃止区間の乗り納めに出かけた。この「さようなら江差線」の一枚は車内に掲示されていたもの。この時点では「さようなら木古内~江差」が正しいことになるが、2016.3.26には五稜郭~木古内もJRから道南いさりび鉄道に移管されたため、路線名としての江差線はそこで終焉。
吉堀駅(2014.4.6撮影)
神明駅(2014.4.6撮影)
湯ノ岱駅(2014.4.6撮影)
宮越駅(2014.4.5撮影)
桂岡駅(2014.4.5撮影)
中須田駅(2014.4.5撮影)
上ノ国駅(2014.4.5撮影)
江差駅(2014.4.5撮影)→「駅ログ
廃止年月日廃止駅
2014.5.12(木古内~江差 廃止)渡島鶴岡、吉堀、神明、湯ノ岱、宮越、桂岡、中須田、上ノ国、江差

千歳線

美々駅(2016.9.4撮影)・・・この半年後、2017.3.4付で廃止

札沼線

石狩当別駅(→「駅ログ」)で1日1本の新十津川行きに乗り換え(2016.9.5撮影、以下同日)。札沼線は、石狩金沢~新十津川(16駅)が2020.5.6を以って廃止に。
中小屋駅
月ヶ岡駅
石狩月形駅(→「駅ログ」)
札比内駅
晩生内(おそきない)駅
札的駅
浦臼駅
於札内駅
下徳富駅
新十津川駅(→「駅ログ」)
廃止年月日廃止駅
2006.3.18中徳富
2020.5.7(北海道医療大学~新十津川 廃止)石狩金沢、本中小屋、中小屋、月ヶ岡、知来乙、石狩月形、豊ヶ岡、札比内、晩生内、札的、浦臼、鶴沼、於札内、南下徳富、下徳富、新十津川

留萌本線

留萌本線(深川~増毛)は全20駅。このうち瀬越~増毛の8駅は2016.12.4が最終日。2023.3.31には真布~留萌の7駅も営業を終えた。2026年春には残る北一已~石狩沼田の4駅が廃止に・・・留萌本線は全廃となる。
峠下駅(2016.9.5撮影、以下同日)
幌糠駅
藤山駅
留萌駅(→「駅ログ」)
礼受駅
阿分駅
信砂駅
舎熊駅
箸別駅
増毛駅(→「駅ログ」)
廃止年月日廃止駅
2006.3.18東幌糠
2016.12.5(留萌~増毛 廃止)瀬越、礼受、阿分、信砂、舎熊、朱文別、箸別、増毛
2023.4.1(石狩沼田~留萌 廃止)真布、恵比島、峠下、幌糠、藤山、大和田、留萌

石勝線・夕張支線

沼ノ沢駅(2016.9.4撮影、以下同日)
南清水沢駅
清水沢駅
鹿ノ谷駅
夕張駅(→「駅ログ」)
滝ノ上駅
廃止年月日廃止駅
2004.3.13
2016.3.26東追分、十三里
2019.4.1(夕張支線:新夕張~夕張 廃止)沼ノ沢、南清水沢、清水沢、鹿ノ谷、夕張
2024.3.16滝ノ上

根室本線

根室本線の東側区間(釧路~根室)には愛称として「花咲線」が使われていて、その駅数は18。厚岸と茶内の間にあった糸魚沢が2022年3月に廃止になったため、車両イラストが貼られている。(2022.7.12撮影)
日本最東端の駅、東根室(2022.7.12撮影)。2025.3.14を以って廃止されると、その称号は根室駅に移る。
根室市は「朝日に一番近い街」。根室駅は「日本最東端の有人駅」だったが、2025.3.15には有人・無人によらず最東端に。
根室駅で撮影した「花咲線全線開通百年の歩み」(抜粋)。釧路~根室の花咲線区間が全線開通したのは1921.8.5だったため、2021.8.5でまる100年。その間の年表なので結構長尺。平成以降、路線愛称が付いたり、愛称の元となった花咲駅が廃止になったり… 廃駅トピックが赤字で書かれているというのがまた何とも。
根室本線の西側は、滝川~東鹿越が列車、東鹿越~新得が代行バスという期間が延々と続いた。まだ列車が動いているうちに、廃止予定区間を乗っておこうということで東鹿越へ。代行バスで辿り着いた際は、感慨深いものがあった。(2022.7.14撮影、以下同日)
金山駅
下金山駅
山部駅
布部駅
廃止年月日廃止駅
2016.3.26花咲
2017.3.4島ノ下、稲士別、上厚内
2018.3.17羽帯
2019.3.16直別、尺別、初田牛
2020.3.14古瀬
2022.3.12糸魚沢
2024.4.1(富良野~新得 廃止)布部、山部、下金山、金山、東鹿越、幾寅、落合
2025.3.15東滝川、東根室

宗谷本線

名寄駅「きっぷ運賃表」(2021.3.6撮影、以下同日)。ここに載っている中で後に廃止された駅は、南比布、北比布、東六線、北剣淵、下士別、北星、南美深、初野、紋穂内、恩根内、豊清水の11駅。駅ナンバリングの欠番もその分増えていることになる。
稚内駅「きっぷ運賃表」。後に廃止された駅をナンバリング順で挙げると、歌内、安牛、上幌延、徳満の4駅が該当。来月には雄信内、南幌延、抜海が廃止になるため、普通列車と特急列車の停車駅の数にいよいよ大差がなくなる感じに。
紋穂内駅
恩根内駅
上幌延駅
雄信内駅
抜海駅
廃止年月日廃止駅
2006.3.18智東、南下沼
2021.3.13南比布、北比布、東六線、北剣淵、下士別、北星、南美深、紋穂内、豊清水、安牛、上幌延、徳満
2022.3.12歌内
2024.3.16初野、恩根内
2025.3.15雄信内、南幌延、抜海
指定席券売機で乗車駅を指定してきっぷを買う時に出る画面の例。「みなみひ」まで入れると「南美深」「南比布」も出てきたが、それは2021.3.12まで。(2021.3.6、旭川駅にて)
こちらは「きたひ」での検索結果。4駅とも北海道の駅だが、宗谷本線の「北比布」、石北本線の「北日ノ出」は2021.3.12までとなった。

 こうして振り返ってみると、先人が苦心して敷いた線路、設けた駅をこうも安易になくしてしまっていいものかと改めて感じる。それが止められない以上は、現地に行ってその最終日を見届けたいところだが、実際はなかなか。代わりと言っては何だが、なくなる駅を含む区間の乗車券を終了日(廃止日前日)の日付で買うことを近年は励行していて、その数も少しずつ増えてきた。

廃止駅どうしの片道乗車券(例)。石北本線「下白滝→上白滝」、留萌本線「礼受→増毛」、函館本線「東山→姫川」、宗谷本線「東六線→北剣淵」「安牛→上幌延」「初野→恩根内」、いずれも今となっては発券不可能な組合せ。

 来たる3/15に向け、今のところ予定しているのは「東滝川→滝川」「東根室→根室」「雄信内→南幌延」「抜海→勇知」の4枚。これらを3/14付で購入することで、JRとしては些少ながらも収入になり、こちらとしては記念になる。

 こうした乗車券を買わずに済むならそれに越したことはない訳だが、これはもう年中行事の域。2026年の春もすでに廃止が決まっている駅があるし、その先も同じような流れは続く(→参考だろうから、紙のきっぷが発売される限りは精々励む所存である。


こちらもどうぞ

Comments are closed, but trackbacks and pingbacks are open.