6月10日は、6「ろ」と10「でん」で路面電車の日。過去日になってしまったが、今回は路面電車に関する話題・・・他社線からアクセスしやすい停留場はどこなのかというまとめでと思う。
路面電車の停留場名に着目すると、アクセスポイントとわかる名称になっているものは多く、概ね「〇〇駅」と「〇〇駅前」に大別される。国鉄の駅を一つの拠点とした時、その駅名と全く同じにするというよりは接尾辞のような形で「駅」や「駅前」を末尾に付すのが決まり事だったのだろう。JRになって以降もそれは継承され、他の私鉄などの駅に接続する停留場もまた然り。筆者調べでは、いわゆる路面電車タイプの軌道にある路線での停留場の数は「〇〇駅」が6、「〇〇駅前」が23と出た。
この件に関しては、こちらのコラム記事で6/8に公開しているので、概要はそこを見ていただくとして、ここでは現地で撮った写真であったり、当該電停の雑記だったりを中心にご紹介する。(参考→名称に「駅」が付く停留場などの一覧)
函館駅前
函館市電(函館市企業局交通部)で、JR駅に近接しているのが函館駅前。函館駅の駅舎改築、駅前広場の整備などを経て、駅前というほどの近さが以前ほどは感じられなくなってはいるが、200mほど歩けばアクセスできる。
都電荒川線
他社線との乗り換えが可能な電停はいくつもあるが、「駅前」が付くのは限られていて、西から大塚駅前、王子駅前、町屋駅前の三つが該当する。いずれも駅に近いという点で正しく駅前ではあるのだが、ホームの位置合いを基準にすると大塚は駅直下、王子は駅脇(JR)または駅斜め上(東京メトロ)、町屋は京成線視点だと駅下、東京メトロだと駅上といった具合でさまざま。鬼子母神前停留場は、東京メトロ副都心線の雑司が谷駅と立地的にイコールだが、開業年の順により名称が揃うことはなかった。雑司が谷駅が先にできていれば、おそらく雑司が谷駅前停留場になっていたものと思われる。(一つ隣の雑司ヶ谷停留場は、メトロの雑司が谷駅開業に伴い、「都電雑司ヶ谷」に改称。仮に鬼子母神前ではなく雑司が谷駅前だったら、都電雑司ヶ谷は南池袋とかになっていた可能性も…)
富山駅、高岡駅、福井駅
北陸エリアには路面電車を運営する事業者が三社あるが、駅派が二社、中間派が一社という内訳になっているのがポイント。中間派の富山地方鉄道には、富山駅、南富山駅前があり、駅派の万葉線は高岡駅、福井鉄道は福井駅がある。当エリアでは3対1で「〇〇駅」が優勢となっているが、かつては全てが「〇〇駅前」だった。前がとれた順に挙げていくと、高岡駅前(2014.3.29)、富山駅前(2015.3.14)、福井駅前(2016.3.27)。なお、富山駅前については、電鉄富山駅・エスタ前に名称が変わり、同じ日にJR高架下に富山駅が新設開業したという経緯がある。福井駅前は、延伸&移設にあわせて福井駅に改称。駅前広場に乗り入れる形になり、JR、えちぜん鉄道との乗り換えがしやすくなった。延伸、移設、改称のワンセットは高岡駅前もまた同じ。
駅前
〇〇にあたる表記がなく、そのものズバリ「駅前」というのもある。〇〇は豊橋が入るところそれがないので、事情を知らずに当地に来ると「どの駅前?」と面食らう可能性も。豊橋鉄道にはこの市内線の駅前のほかに、渥美線の新豊橋もある。同じ事業者であれば新豊橋駅前としても良さそうだが、そういう訳にも行かないし、豊橋・新豊橋駅前というのも変。豊橋が落ちたのには何かしら理由がありそうだ。
阪堺電気軌道
天王寺駅前、新今宮駅前、浜寺駅前の三つがある。JR基準と考えれば、天王寺、新今宮で通用するが、天王寺は近鉄の大阪阿部野橋、新今宮は大阪メトロの動物園前も乗換駅なので、中立性という観点からすると一考の余地はある。駅前を付けず、天王寺・阿部野橋、新今宮・動物園前とするとどちらにも通用する訳だが、今更だろう。
浜寺駅前は、南海電車の浜寺公園駅に対応する駅前だが、浜寺公園駅前とはなっていない。浜寺公園の旧名が浜寺(1897年~1907年)だったことによるが、11年という短命だった駅名が今なお駅前の方で残っているというのは、趣深くもあり一興でもあり、だろう。位置関係を重視するのであれば、浜寺駅前停留場は浜寺公園停留場が相応しく、浜寺公園駅は元の浜寺駅でもいいように思う。似たパターンとしては、住吉大社駅と住吉停留場もある。前者は住吉公園駅、後者は住吉大社停留場がよりピッタリくると考える。
岡山駅前
JRの岡山駅に対して、岡山電気軌道には岡山駅前停留場がある。広場を抜け、横断歩道を渡る必要があるので、駅前と云いつつもアクセスが円滑とは言い難いのが実状。それを打開するため、文字通り駅前にシフトする事業が進行中ではある。
岡山電気軌道が中国運輸局に出した「岡山駅前広場乗り入れの軌道事業特許申請」は、2020年3月に特許状が交付された。当初予定では2023年度中に延伸される予定だったが、今は2026年度末完成見込みに変更。次に岡山に行くとすれば延伸後がいいのかなと思う。
広島駅と横川駅
広島電鉄の軌道区間でJRとの乗り換えができるのは広島、横川、西広島の三つ。広島、横川については停留場名が広島駅、横川駅で、西広島は広電西広島という違いがある。広島駅停留場については今は路面にあるが、これを新設する駅ビルの2階部に移すとともに、高架区間を整備。高架を設ける上で新たなルートができ、広島駅~稲荷町~松川町(仮称)~比治山下が結ばれる。一方で現行の広島駅~猿猴橋町~稲荷町の軌道区間が廃止に。2025年春開業予定というからいよいよである。開業初日に行けたら行きたいものだと思う。
伊予鉄道の変則パターン
初めて松山を訪ねたのは1989年8月のこと。伊予鉄道に乗ったのも初めてだったが、この時「〇〇駅前」にあたる電停はクリアしていて、当時は松山駅前、松山市駅前だった。それがずっと続いているものと思っていたら、いつしか「JR松山駅前」「松山市駅」に変わっていて、今年1月の松山の旅ではその辺りを改めて確認することに。「〇〇駅」「〇〇駅前」の両方があるので、中間派と言えそうだが、明確に使い分けている観はない。強いて言うなら、JRの方は少々離れていて、同じ伊予鉄の松山市の方は目の前が電停といったところ。市内電車と郊外電車の線路が平面(十字)交差することでちょっとしたスポットになっている大手町に関しては、停留場が大手町駅前、駅が大手町と名称を分けている。市内電車と郊外電車が同じ構内にある古町については名称は同じ。古町停留場と古町駅ということになる。とにかく呼称のパターンがいろいろなのが伊予鉄の一つの特徴と言える。
高知駅前
JRの高知駅の前にあるのが、とさでん交通の高知駅前停留場。南口を出ればすぐに電停なので、全国屈指の好アクセスと言っていい。とさでん交通の軌道路線は四つあり、電停の数は実に76を数える。東西を結ぶ後免線、伊野線はJRの土讃線と付かず離れずな感じで走っているため、JR駅に近い電停も複数あるが、それらの名称がまた何とも言えず、朝倉駅に対する朝倉駅前停留場、伊野駅に対する伊野駅前停留場はいいとして、それら駅前停留場の隣にはご丁寧に朝倉停留場、伊野停留場もあるのだから話がややこしい。JRの朝倉と伊野の間には枝川があるが、当駅に近接する電停に至っては枝川停留場。枝川駅前停留場ではない。
黒崎駅前
かつては西鉄北九州線の停留場で、今は筑豊電気鉄道線の駅というのが黒崎駅前。軌道法に基づく路線ではないので、黒崎駅前停留場ではなく、黒崎駅前駅になるのがポイントだが、路面電車タイプの車両が発着しているのだから停留場で十分通用すると思われる。
JRの黒崎駅の前にあるので、名称としては間違いはないが、黒崎駅が橋上駅舎化され、その駅舎がさらに改築され、ペデストリアンデッキも拡張されといった具合に変化を重ねたことで、地上の電停から橋上部の駅出入口までは何となく距離感がある。2023年11月にその乗り換えを実際に体験し、そう思った。
長崎駅前
2005年秋にJRの長崎駅に来た時はまだ地上ホームの駅だった。その後の新幹線駅整備などにより、今は高架ホームの駅になり、駅自体が西に動く感じに。かつて留置線が並んでいた一帯は再開発が進み、今も一部が工事中となっている。地上駅の頃はそれほど遠くなかった長崎電気軌道の長崎駅前停留場は、当の長崎駅に距離をとられた形に。アミュプラザの2階を経由すれば電停に通じる歩道橋に出られるものの、300mほど歩かないといけなくなった。駅前というよりは「長崎駅東口」停留場とかにした方が今は実態に合っていると言える。
長崎電軌の駅前電停は浦上駅前停留場もある。出島や浜町方面に行こうとすると時間はかかるが、JR~路面電車の乗換利便性という点では今はこちらに分がありそう。JRの本数は限られているが、西浦上駅からの路面電車アクセスもある。こちらは千歳町停留場まで200m余り。北の赤迫方面へはその手前に昭和町通停留場(長崎駅前方面は通過)があり、最寄りの電停となっている。
熊本市電
JRの駅前にある停留場としては、熊本駅前、新水前寺駅前、上熊本の三つがある。いずれも信号待ちなどがなく、アクセス良好。上熊本は2019年10月に、上熊本駅前から改称した経緯がある。
鹿児島市電
鹿児島市電でJR駅の前にあるのは三つ。鹿児島駅前、鹿児島中央駅前、南鹿児島駅前といずれも駅前が付くのでわかりやすい。わかりにくいというか紛らわしいのは、JRの駅と同じ名称の電停が二つあって、両者が何となく離れていること。郡元駅と郡元停留場は約800m、谷山駅と谷山停留場は600m余りという離れ具合。郡元駅に近い電停としては純心学園前停留場があるので、乗り換えるならそちらでいうことになる。
今回挙げたこれらの「〇〇駅」や「〇〇駅前」は路面電車に乗るための一つの足がかり。駅と電停の位置関係を現場で体感した上で、路面電車のプチ旅に興じるのもいいと思う。
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