外出や旅行を控える機運高まる中ではあったが、前々から予定していたものをわざわざ取り止めるのも忍びない。考え得る最大限の配慮、自衛をしつつ、久々に長期の旅行に出ることにした。メインは西日本。JR3社(西日本・四国・九州)エリアが乗り放題になる「どこでもドアきっぷ」を軸にした旅で、3日間用と2日間用を組み合わせて臨んだ。
四国、九州を含めて乗り放題になるのは3日間用。2日間用は山陽新幹線(博多まで)を含むJR西日本エリアに限られるが、それでも長距離の旅は十分可能になる。願ってもない企画乗車券だと思う。
日数に関係なく、指定席が6回分とることができるのもポイント。単独利用はできず、二人一組で同一行程という条件はあるが、長距離移動(+指定席)がベースになるので支障にはならない。細君の協力を得て、無事5日間の旅(11/20~24)を終えることができた。
行けそうで行けなかったところ、乗れそうで乗れなかった列車というのは多々あるが、それらをこなす上でも有効。交通手段に限った行程は、以下のようになった。(【指】は指定席利用、【自】は自由席利用、単に「~」のみは普通列車など。[乗換]表記がない駅では、改札の外に出て一定時間を過ごした。)
11/20(金) ~【指】~糸魚川~【自】~金沢~【自】~福井~【指】~新大阪[乗換]~【指】~博多 |
11/21(土) 博多~博多南~博多~【指】~鹿児島中央~【指】~都城、都城駅前~志布志駅前(バス)、志布志~油津~飫肥 |
11/22(日) 飫肥~南宮崎[乗換]~【自】~宮崎~【指】~鹿児島中央[乗換]~【指】~小倉[乗換]~【自】~厚狭~小野田~雀田~長門本山~雀田~宇部新川~宇部[乗換]~厚狭 |
11/23(月) 厚狭~【自】~新山口~【指】~岡山[乗換]~【指】~姫路[乗換]~【指】~竹田~和田山[乗換]~福知山[乗換]~【指】~亀岡~馬堀、トロッコ亀岡~トロッコ嵯峨、嵯峨嵐山~京都 |
11/24(火) 京都~宇治~京都~【指】~金沢[乗換]~【指】~上越妙高~ |
という訳で、今回はそんな長旅のふりかえり。ひととおり綴ると相当なボリュームになりそうなので、テーマ別にダイジェストにした上で2回に分けてご紹介しようと思う。
*第558話では「鉄道編」、次回第559話では「風景・その他編」とし、それぞれにサブテーマを設定。ひとつご笑覧ください。
初めての路線(+完乗)
1.博多南線(博多8:13発→博多南8:22着、博多南8:30発→博多8:39着)
2.九州新幹線(博多9:06発→鹿児島中央10:33着)
本州を走るフル規格の新幹線は、東海道、山陽、東北、上越、北陸とあるが、本州以外のみを走る新幹線というのはなぜかこれまでご縁がなく、九州新幹線もその一つだった(残るは北海道新幹線)。全面開業したのは2011年3月の話。何とか10年が過ぎる前に乗ることができたが、縁遠いにも程があると我ながら思う。
景色を楽しむという観点ではそれほどではない印象だったが、速さに関しては何も言うことはない。30年前のほぼ同じ時期、九州一周の旅(→参考)をしていた際に駅で入手した時刻表を見ると、博多→西鹿児島(今の鹿児島中央)は、最速の「ハイパー有明43号」で3時間38分を要していた。11/21に乗った新幹線「さくら541号」は、何と1時間半かかっていない。九州の旅の概念が変わる速さだと思った。
3.日南線(志布志15:50発→油津17:04着、油津17:41発→飫肥17:51着、飫肥10:55発→南宮崎12:01着)
新幹線や特急が乗り放題のきっぷがある時は、普通列車メインの路線で使うのは時間的にもったいないという見方はある。だが、速い列車を使える時こそ、アクセスしにくいローカル線をめざすという考え方もある。今回は、そんな中から宮崎県南部を走る日南線を選択。終点にあたる志布志駅は、ほかの鉄道路線との接続がないため、全区間の乗車を果たそうとすると南宮崎~志布志を往復せざるを得ないのだが、バスを使って志布志入りし、北上しながら完乗することにした。
バスの本数が限られるため、その時刻に合わせて逆算。鹿児島交通の日中一本のバスで、都城駅前(13:52発)→志布志駅前(15:14着)と乗って、これまた本数が少ない日南線の列車に揺られた。海岸線に沿って走るイメージが強い線区だが、実際は山間部あり、田園風景ありで多彩。志布志湾に沿う辺りは、難所やカーブが多く、とにかくよく揺れた。その揺れ心地、そして眺望・・・アトラクション要素の高い路線だと思う。(沿線の景観については、第559話で)
4.小野田線(小野田17:42発→雀田17:57着、雀田18:12発→長門本山18:17着、長門本山18:37発→雀田18:42着、雀田18:49着→居能18:58着→)
山口県内の路線は数あれど、小野田線(+宇部線)ほど入り組んだ線はほかにないだろう。暗くなるのは承知の上で、その複雑な感じを実体験すべく乗り降りに臨んだ。小野田線自体は、小野田~雀田~居能(11.6km)と、支線の雀田~長門本山(2.3km)と決して難度が高い訳ではないのだが、小野田から宇部線方面(居能以遠)に行くのに、小野田線のほかに山陽本線を経由するパターンがあったりするものだから煩雑な印象になる。11/22は、素直に小野田線とその支線に乗る行程を組んだ。
ちなみに支線の方は、朝2往復、夕1往復という極限ダイヤ。全線を乗るのが難しいのもまた小野田線の特徴な訳だが、「どこでもドアきっぷ」のおかげで何とか完乗できた。
5.播但線(姫路10:44発→竹田11:43着、竹田13:44発→和田山13:50着)
兵庫県を走るJR路線も意外と疎遠なもので、全く乗ったことがない線が二つあった。加古川線と播但線、それらのうちどちらかを今回の旅でと考え、せっかくなので特急が通る播但線にした。
乗ったのは「はまかぜ1号」。竹田城跡の観光も兼ね竹田まで乗り、竹田からは普通列車でひと駅。電化区間(姫路~寺前:29.6km)は近郊、非電化区間(寺前~和田山:36.1km)は里山というのが大ざっぱな景観要素だが、車窓は変化に富む。普通列車でのんびり行くのもいいと思った。
6.嵯峨野観光鉄道(トロッコ亀岡16:30発→トロッコ嵯峨17:04着)
「どこでもドアきっぷ」の対象ではないが、こういう時でないと乗れないのが嵯峨野観光鉄道。例年だとインバウンド需要で予約もままならないところ、今回はしっかり席を押さえることができ、渓流美、紅葉(一部)などを楽しむことができた。(トロッコ列車からの眺望については、第559話で)
エンタメ的列車
嵯峨野観光鉄道のトロッコ列車もそうだが、いわゆるエンタメ的な要素の強い列車に乗るというのも一大テーマだった。
きちんと乗るという点で満喫できたのは「ハローキティ新幹線」。2019年秋の一人旅では、相生駅で到着~発車を見物、撮影したが、こうした列車は車内に入らないことには始まらない。
岡山から乗った「こだま840号」が当該列車。停車時間が長いタイプで、岡山では9:40着-53発、次の相生では10:09着-19発といった具合で、スローな列車だった。停車中はよりじっくり車内を見て回れるし、ホームに出れば撮影会が可能。姫路に着くまでの50分弱、その世界を堪能することができた。
乗ることはなくとも、間近で名物列車を見たり撮ったりという機会も少なからずあった。
鹿児島中央駅では「指宿のたまて箱」が着くところを、日南線の北郷駅では「海幸山幸」と行き違う場面をそれぞれ動画で撮影。京都駅では、「WEST EXPRESS 銀河」「ハローキティ はるか」に接することができた。デザイン性の優れた列車は、観賞というより鑑賞に値すると思う。
鉄道施設も
降りた駅、立ち寄った駅で、鉄道車両の展示施設が併設されていたり、付近にあったりということもままある。11/20は糸魚川駅アルプス口にある「ジオステーション」を訪ね、大糸線「キハ52」の実物、「トワイライトエクスプレス」の再現車両などを見学。11/21は志布志鉄道記念公園で、国鉄「キハ52」、SL「C58-112」などを晴天のもと見物、撮影できた。11/23は思いがけず、トロッコ嵯峨駅にある「19世紀ホール」で「C58-48」などと対面。総じて鉄道三昧だった。
初めて乗降した駅については、追い追い「駅ログ」に綴っていく予定。道中のあれこれや沿線風景などもそちらで書けるものは書いていこうと思う。そちらもあわせてご覧いただければということで。
次回「風景・その他編」(予定)もお楽しみに。(→第559話)
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