第558話は、鉄道関係をメインにした行程全体のふりかえり。今回は、特に印象的だった風景のほか、「これは!」といったもの、オプション的なあれこれについて紹介する。
風景10選
11/21、特急「きりしま10号」からの桜島の眺め。桜島ビューは鹿児島中央を出てから30分ほどは楽しめる。この一枚は、蒲生川河口(帖佐から錦江の間)を通過した際に撮影。
日豊本線の特急で鹿児島から宮崎方面に向かうのは30年ぶりのこと。ちょうど30年前の1990年11月21日は、熊本から鹿児島本線で西鹿児島(今の鹿児島中央)に入り、鹿児島駅から特急「にちりん56号」で宮崎に向かった。2時間の旅だった。当時も桜島を長々と眺めていた訳だが、曇天だったため、印象は弱め。晴れて桜島を拝むことができた。
ちなみに、鹿児島市内に入るのも、宮崎県入りもこの時以来。九州新幹線で博多から短時間で鹿児島中央に来ることができるようになった一方で、日豊本線の特急は当時も今も所要時間では大きな差はなし・・・乗っている間、そのスピード感が懐かしく思い出された。
11/21、日南線の海側の車窓。日南線で日向灘の景観が間近に見られるのは、大堂津の前後から油津の手前まで、伊比井の前後から小内海~内海といった辺りで、それほど多くはない。この写真は、大堂津~油津で撮ったもの。中央右の島が「小場島」で、その左側(北側)に大小さまざまな突起状の島(または岩?)が並ぶ。特に名称はないようだが、筆者としては名勝だと思う。
こちらは、小内海~内海の車窓(11/22)。「鬼の洗濯板」が続く一帯で、それらしき直線状の自然造形が見られた。見るからに洗濯板とわかる光景は、潮が引くと現われるらしい。
11/21の宿泊先は日南市飫肥。飫肥は城下町ならではの町並みが随所で見られ、「九州の小京都」とも呼ばれる。写真は、飫肥城跡に通じる大手門通り(11/22撮影)。
飫肥で泊まったのは、こちらの一軒。「おびむらさき」という名称だが、表向きには何の表示もなく、宿であることはまずわからない。従業員などは不在で、事前に得た情報に従い、解錠して入室するシステム。「まるまる一棟貸切最大9名【素泊まりプラン】」で予約し、ゆったり過ごさせてもらった。
11/23は、雲海で名高い竹田城跡へ。標高約354mからの眺めは素晴らしく、つい長居してしまった。実は竹田駅に着いた時点で小雨模様で、山頂に向かう際も降ったり止んだりだったのだが、そんな雨が一時止んで日が射して来たらこの通り見事な虹が出現。竹田城跡の本丸跡から南千畳に向かう途中で、その全貌を収めることができた。
次の列車の時間を気にしながら山を下りる。再び雨が降り出し、雨脚も強めになる中、登山道を進む。駅に通じる道は二つあったが、トータルの距離を考え、短距離だが段差きつめのハードな方を選択。結果的には間に合ったのでよかったが、想像を超える難コースだった。虹が現われたのは、逆算するとピッタリなタイミングだったと言える。
11/23は、竹田城跡のほかに、嵯峨野観光鉄道のトロッコ列車というお楽しみも。山陰本線の馬堀駅から線路に沿って歩くと、その起点・終点となるトロッコ亀岡駅に出る。道中の田園風景が実にいい色合いだったので撮影。深秋ならではだと思う。
トロッコ列車からの主な景観は、大堰川の流れ。紅葉シーズンに入ったので、その川景色に赤や黄が入る恰好になる。列車は基本的に徐行運転につき、シャッタースピードを調整できるカメラであれば、問題なく紅葉メインで撮れるのだと思うが、今使っているカメラはそこまでの性能がないので、せいぜいこんな具合。紅葉が連続する区間では、動画で撮ることにした。
カーブ区間では、先頭のディーゼル機関車が視界に入る。窓のないトロッコ車両だとこうしたシーンも撮れるが、今思うと結構スリリング。トンネルに入ればトロッコ気分はより一層高まる。行楽というよりもアトラクションだと思う。
11/24は、フリーで過ごせる時間を長めに確保。ただし、京都市内の有名どころは密状態が予想されるため、少し外して宇治に行くことにした。宇治駅周辺で紅葉が見られるスポットはいくつかあるが、おすすめの一つ(by 観光案内所)が興聖寺に通じる琴坂。写真だとわかりにくいが、正しく紅葉という木々も少なからずあり、満喫できた。宇治での滞在時間は約4時間。ちょうどいい感じだった。
特急「サンダーバード29号」で京都から金沢へ。京都を出ると次の敦賀まで50分余りノンストップで、その間の半分ほどの時間を琵琶湖を見ながら過ごせる。琵琶湖が映える時間帯に走っていたこともあり、ひたすらカメラを向けていたが、高速運転の特急列車なので、どの駅を何時にというのが把握しづらいのが難点。写真は、その50分の半分くらいの頃合いで撮ったもので、北小松から近江高島の間と思われる。位置情報を記録できるカメラがあれば…といつも思う訳だが、あとで調べるのもまた一興ではある。
三つのアミュプラザ
JR九州が手がける駅直結の大型商業施設「アミュプラザ」。小倉、長崎、鹿児島、博多、大分(おおいた)の順で開業し、今回の旅では11/20にオープンしたばかりの「アミュプラザみやざき」もごく短時間だが立ち寄ることができた。
「アミュプラザ博多」は、2017年5月の旅でも訪ねていたので、2回目。地域共通クーポンを利用すべく鶏料理が名物の店に入り、水炊きのセットなどをいただいた。
鹿児島中央では、「アミュプラザ鹿児島」で30分ほど過ごした。2004年9月開業とのことですでに16年が経っているのだが、華やいだ雰囲気にあふれ、実に新鮮。年数を感じさせない活気があった。
おまけ
100話前、第458話で郵便ポストのあれこれを紹介した。その後も気が付く範囲で撮りためたりしてきたが、今回の旅でも風変わりなタイプを二つ見つけた。折角なので、この場を借りて掲載する。
上越妙高駅「釜ぶたの湯」
「どこでもドアきっぷ」のエリアの端にあたる駅の一つが、北陸新幹線の上越妙高駅。上越妙高からはJR東日本の「お先にトクだ値スペシャル」(通常の半額)で帰京する。ひと昔前なら、区間を分けた形でも連続して有効なきっぷであれば一乗車で乗り通すことができたところ、「どこでもドアきっぷ」と「お先にトクだ値スペシャル」の組み合わせではそれができず、一旦降りることに。磁気券の「どこでもドアきっぷ」で出て、トクだ値適用のICカードで入るというのを体験した。ICカードを使った新幹線の乗車サービス「新幹線eチケット」が導入されたことに伴う話だが、便利なようでそうでもないような...
この時は「はくたか574号」で19:12に着き、次の「はくたか576号」で20:09に発つというスケジュール。駅前に「釜ぶたの湯」なる温泉施設があることは承知していたので、そこでくつろがせてもらった。竹田城跡からの帰りの登山道で足に負荷がかかり、ふくらはぎなどに痛みが残っていたところ、当温泉で多少なりとも癒え、その後も体調良好な日が続いた。きっぷの都合でまた同じような展開になったら、ぜひまた利用しようと思う。
まとめに代えて
・今回の旅は、正に「どこでもドア」の感覚。新幹線や特急が乗り放題となれば、行きたいところに行くというのはある程度叶う。仮に行程通り行かなくとも、「フリーきっぷ」ならではの安心感もある。本数が多いエリアであればいくらでも調整は利く。なかなか足が延ばせない地も、そうした前提があれば行程に入れることもできる。
・行先も多彩なら宿泊先も多様。泊まったのは、ターミナル駅近く(2か所)、城下町(武家屋敷風)、新幹線のローカル駅近くの4か所で、うち3か所は大浴場つきだった。「Go To」対象で、地域共通クーポンを発行してもらったのは3か所。計8,000円分だった。主に夕食に充てた。
・11/20~24の5日間、気温は高めで、天気も概ね良好。タイミング的によかったようだ。11/21は南九州メインだったこともあり、暑いくらい。志布志に着いた際は、南国のような陽気を感じた。11/22も宮崎県内にいる間はほぼ晴れ。「いい夫婦の日」日和だった。2020年は早いもので結婚25周年。今回はその記念旅行という面も実はあった。総じて佳い旅だったと思う。