訪日客、いわゆるインバウンドによるオーバーツーリズムや観光公害がいよいよ目に余るようになってきた。人数が増えれば、一部に良からぬ客(客と言っていいのかどうか)が混じるのは世の常というもので、そこをどう抑制するかも課題だろう。国内のインフラ面に与える人や物(特にスーツケース)の量的なインパクトに加え、その人や物の一部が悪さをすることによるあらゆる損失、ダメージ… 言うなれば量と質の両面が問われていて、報道ではそれらが混在した形で取り上げられているように見受ける。筆者はどちらかと言うと質を問う派。近場、外出先、旅行先で実際に目にするケースが量よりも質に関するあれこれが多いためである。
それら実例は、文化、慣習、感性の違い云々で片付けられるものではない。基本はあくまで「郷に入っては郷に従え」だろうから、そこをまず弁えた上で、旅先、宿泊先等で一定の敬意や謝意を持ってもらわないことには!と考える。「自分や自国にされて嫌なことは他人や他国にもしない」というのは常識のように思うが、おそらくそれが通じない、そう思わない人がいるから目に余る話が後を絶たないのだろう。これはインバウンドに限らず、在留外国人にも言えることで、度が過ぎればハラスメントに通じる。筆者はこれを略して「外ハラ」と呼ぶことにし、「外」は外国人、特に悪質な場合は外来種と捉え、時には注意(店員などがいる場合は間接的に)をするようにしている。
自然界では外来種は脅威。その対策の基本は「入れない」ことだが、鎖国状態にでもしない限り、人物のそれは入ってきてしまうので、入国時にしっかりガイダンスするか、出国前にレベルチェック(一定の要件をクリアしないと旅行不可)するかだろう。
あとはそのような行為に及んでしまう心理面を押さえ、必要に応じてカウンセリングするとか。何らかの体験→SNSで発信、というのはいいが、その背景が共感や注目を得たい(いいね的な某)、優位性を示したいといった場合が厄介で、社会的問題になるのもそのケースが大概と見る。注目度を高めるために無茶をする・・・それが承認欲求に基づくものだとすれば、カウンセリング等を通じて自覚してもらった方がいい。
その場の歴史や意義といったものを鑑みず、ただキャッキャッしながら自撮りに夢中な方々を見ると、気の毒にさえ思う。そこに行って何をして何を得たのかの考察、振り返り、知見の集積があってこその旅。キャッキャッするのが目的であれば、わざわざ日本に来なくてもいいだろうと思う訳だ。
前置きが長くなったが、以下はここ1~2年で遭遇した「外ハラ」的な七選。30話ごとの「べからず集」の一環として、ご紹介する。
路上集団喫煙
第629話に記した九州鉄道記念館、旧門司駅舎跡発掘調査現場での道中、会話の感じから韓国人と思しき男性旅行者の集団と行き違う。路上喫煙は禁止の筈だが、その一団の大半が辺り構わず煙を吐き散らしながら闊歩していて大迷惑。鉄道記念館入口にはSL「59634」が常設されているが、煙の実演でもあればそれを是非浴びてもらいたいと思った次第である。
境内での非礼等
今や悪しきインバウンドによるあれやこれやが目に付く代表的なスポットと言っていいのが寺社境内。神社においては、神様に対する礼儀や作法が伴って然るべきところだが、その服装、身だしなみからして逸脱している外国人を多々見かけるし、参道の中央に座り込んだり屯したり、映える鳥居があればそこでピースサインしながら自撮りに興じたりとそれはもう…である。信仰に係る場所というのはわかっている筈なのに、その一部インバウンドは娯楽施設かアトラクションかという感覚の方が大きいのだろう。
2024年6月、福岡市内の二つの神社をお参りした際もそれは顕著だった。筑前国一之宮の住吉神社では、(インバウンドを含めて)弁えのない参拝客が多いためか、その手の呼びかけが充実していて、「正面から写真を撮ってはいけません 参道の真ん中は神さまの通り道」「神社とは日本古来の信仰で神々を祀るための施設」「神さまに失礼のない服装 態度で」「境内では静かに」といった文言が多言語で掲示。そうした掲示が目に付かなかった櫛田神社の方は、インバウンドの奔放な振る舞いが目立ち、居心地が悪いことこの上なかった。京都の各社寺ではおそらくもっと深刻なのだと思う。入口で誓約書を書いてもらって、違反(罰当り)時はペナルティ(ご奉仕)といった仕組みがあってもいいのではと思っている。
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立つ人、跡を大いに濁す
ホテルの朝食がビュッフェスタイルの場合、食べ終わった食器等をスタッフが片付けに来てくれるところと、セルフで片付けに行く必要があるところとに大別される。後者では、そのスタイルが周知されているかどうかがポイントだが、わかっている筈なのに片付けせずに放置してしまう(=跡を濁す)訪日客が一定数いるのが実際。片付けができないばかりでなく、食べ物の残し方やテーブルの汚し方がまたひどかったりもして、それらが1か所や2か所でなかったりすると食欲も失せる。昨年11/30~12/2で連泊した三河安城の東横インが正にそれ。アンケートにはその旨を書かせてもらった。
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飲食店テーブル席で歯を磨く
インバウンドではなく、海外からの留学生でも「?」&「!」な人物はいる。第642話に書いた通り、5/18の「国際博物館の日」では東京国立博物館に出かけたが、その帰りに鶯谷駅近くのファミレスで食事をとっていた際に遭遇した一件がこれ。テーブル席にいながらにしての歯磨きだった。日本語を交えつつも中国語で会話している学生風の男女数人が隣の席にいて、特に騒々しいでもなく至って普通の感じだったのだが、食事を終えた後が悪かった。こちらがデザートをいただいている最中、どこからともなくデンタル系の異臭が漂ってきたので、ふと隣席を見遣ると男子一人が歯磨き粉を付けたブラシでシャカシャカ。せっかくのデザートを台無しにしたくなかったので、他の客がいる近くでの歯磨きはNGの旨を即刻伝え、その場から離れてもらった。いやはやである。
周囲に客がいる・いないに関わらず、客席でする行為ではないのは明らかな訳で、留学生?と言えど出来がいいとは限らないことがよくわかった。退席後に食器を見てみたら、案の定。歯はきれいにする一方で、テーブル周りではそれができない。何を学びに来たのかと訝しくなる諸君だった。
飲食店テーブル席で大声通話
外国人(特にアジア系)ではた迷惑なのは必要以上に声が大きいこと。飲食店で会話がしやすい席に複数人が集うとさらにボリュームアップするので、それとわかる場合はできるだけ離れた席につくようにしている(後から騒々しいのが来た場合は、店員にリクエストの上、席を移動させてもらう)。
悩ましいのは、一人客が突如喧しくなること。話し相手が近くにいないと携帯で通話したくなるようで、放っておくと徐々にエスカレートする傾向が見られる。お店の注意書きにその関係が明記されていれば、それを根拠に店員に伝えれば大抵は収まるので、何とかなる部類ではある。ちなみにガストではご遠慮事項の一つとして「周囲に聞こえる音量での携帯電話やパソコンの利用」が挙げられ、「その他周りの迷惑となる大声や行為はご遠慮下さい。」との一文もある。サイゼリヤではズバリ「店内での携帯電話での通話はご遠慮ください。」である。あいにく日本語かつ店頭に出ているだけなので、多言語表記+各席に配置を望みたいところだ。
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なぜそこでなめるのか
インバウンドか在留かは不明だったが、若い中国系カップルが近所のスーパーに入って来て、女性の手にソフトクリームがあったのを見て、嫌な予感が走る。おそらく駅前のファストフード店で買ったもので、その手軽さゆえ食べ歩きを選択したのだろう。そのまま外で食べていればいいものを食べかけ状態で売場をウロウロ・・・これは不可ない。溶けたクリームが商品に落ちるよりはマシだが、予想通りペロペロやりながらペチャクチャやっている。「店内飲食不可」を掲示する店が多い中、このスーパーではそれは見かけなかった。一応、売場責任者と見られる方に話はしたが、注意したのかどうか。いろいろな意味で「なめてはいけない」件だった。
転売系買い占め
こちらもインバウンドか在留か何とも言えないグループだったが、いわゆる開店記念(オープンセール)の特価品を買い占める現場を目の当たりにしたことがある。どう見てもその場にいる人数よりも多い品をひとところに集めて、現金の受け渡しなんかもしていたから、いわゆる「転売ヤー」系と思われる。店が想定している客と違うタイプの人々の手に渡ってしまう悲しい現実。典型的な外来種だと筆者は思う。
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メモ
- 出入国在留管理庁では、「政府が日本人と外国人との共生社会を築くために進める取り組みの一部を分かりやすく紹介」するサイトとして、「HarmoniUP!(ハーモニアップ!)」を公開している。この他に「日本に入国された外国人のみなさまへ~新規入国者向けガイダンスページ~」や「生活オリエンテーション動画」などもあるが、これらがどれだけ浸透しているかだろう。旅行者向けにもこうしたサイトがあれば多少なりともレクチャー、ガイダンスにはなる?
- 最近見たインバウンド関係の記事(憂慮系):「海外のオーバーツーリズム事例に学ぶ、観光客に“ナメられない”対策とは」・・・マナーのない外国人が少なくなく、外国人全体への嫌悪感が強まっている印象 / 「地域住民のための公共サービスを旅行者が破壊している」・・・「訪日外国人旅行者が多ければよい」という基本的発想を根本から考え直す必要がある。
外来種は自分で自分の首を絞めてしまう側面がある。悪しき外国人が特定の観光地に集中することでその場所の居心地が悪くなり、いずれは人出が減るという状況も起こり得るかも知れない。そうなる前に打つべき手は打つということだと思う。
今回は、訪日客、在留外国人による実例に沿った形での「べからず」だったが、実は日本人でも同様の行為(歯磨きはさすがに?)が当てはまる可能性は大きく、逆にもっとひどいケースも有り得るということは添えておいた方がいいだろう。あまりあってほしくはないが、それら事例がストックできたら次の「べからず集」(第690話予定)でと思う。
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