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第667話 特別〇〇セレクション(2025.6.15)

 特別な〇〇と謳っていなくても十分に特別感のある催しや企画等はいろいろある。第665話で記したJTBツアーもそういう意味ではかなり特別。振り返ってみると5月は何かと特別な某にご縁があった月だった。そんな訳で今回はそのセレクション。特別企画展、特別公開をはじめとする4件をご紹介する。


企画展

 九段下にある昭和館は3階に「特別企画展会場」が設けてあって、時々興味深い展示が開かれる。3/15~5/11は前期・後期に分ける形で「版画家が刻んだ昭和の彩り」と題した企画展が開催。前期の方は行けなかったが、5/5に後期分を見に足を運んだ。木版画を通して古き佳き昔の昭和の情景を堪能。恩地孝四郎作の「東京駅」(1945年)は大いに感銘を受けた。前期分も収録されていることから図録(→参考を是非と思ったが、この日は見送り。後日改めて買いに来ようと思っている。

特別企画展会場入口で撮影。入場無料というのがまたありがたい。

公開

 降ってわいたような催しというのもあって、5月下旬は「東京建築祭2025」で週末の予定があわただしくなる。2024年に続き2回目ということで、年数は浅いながらもなかなかの企画。地方都市ではその建造物一つで観光スポットになる例は多々あるが、都区内ではそれと同等の名建築であっても、数が多かったり平時は一般公開していなかったりで埋もれているケースが少なくない。東京建築祭は知名度の度合いに関わらず、建物の内外で目を惹くものがあればそれを網羅する形で展開。全43件を対象に、特別公開30件、特別展示13件が行われた。建物単独のほか、複数箇所を巡回するガイドツアーもあった。どれも大人気だったようだ。

 予定を立てるのが遅れたたため、何だかんだで筆者が廻れたのは5/24の一日のみ。エリア別に見た時にある程度固まっているのが「神田・九段」エリアだったので、地下鉄で神保町に向かい、特別公開を4件・・・神田ポートビル共立講堂岡田ビル安井建築設計事務所の順で見学させてもらった。

 通勤等で「神保町=日常」だった際には前を通ることはあっても中に入る機会は当然ながらなし。神田ポートビルは2021年4月にリニューアルオープンしたので、筆者が通りがかっていたのはその着手前の話になり、単に古いビルという程度の認識だった(写真も撮ったのかどうなのかレベル)。岡田ビルは「不適合建築」だった建物を大幅な減築により適合水準の耐震補強を実現したという(ひと味違う)名建築。その工夫が最たる見どころだった。

神田ポートビル。1964年に建てられた精興社(印刷会社)の旧社屋をリノベーションし、「文化複合ビル」として復活。
パッと見は昭和風情のビル。中に入ると印象は大きく変わる。文化複合を標榜するだけあって、公式サイトを見るとその一面がわかる。
当ビルのパンフレットの裏表紙はスタンプが捺せる仕様。白地の面にうまく捺すとビル外観が収まるようになっている。この辺の遊び心が神田ポートのコンセプトなのだと思う。
2階「ほぼ日の學校」フロアには、「岡本太郎さんのイス」が置かれ、一大名物に。(着席・撮影可)
1938年竣工の共立講堂。地下1階、地上4階で、往時は「日比谷公会堂に並ぶ大型の音楽堂」であり、「最先端の音楽文化を発信するメッカ」だったそうで。
講堂正面。いわゆる昭和モダンを感じさせるデザインが目を惹く。
講堂内部。ステージの緞帳は桜を全面にデザインしたもので美麗。左下には「龍村美術織物 謹製」とあった。
客席もどことなくクラシカル。1階席から3階席まであり、全1769席。規模としてはなかなかだと思う。
岡田ビル。1969年築なので、場合によっては解体やむなしレベルだが、減築により再生。屋上まで続く共用階段、屋上部が特別公開された。
東京建築祭のポスター(@岡田ビル)。開催期間は5/17~25で、特別公開は5/24・25がメイン。
安井建築設計事務所では模型やパネルの展示がいろいろ。4/18に訪れた夢洲駅のコンコース階(30分の1)模型もあった。「折り紙天井」は現地で一応見てきた訳だが、言われてみれば確かにという感じ。
当事務所は「WORK VILLA MITOSHIRO」(旧住友商事美土代ビル)の1~3階にあり、今回はその一部(パブリックスペースにあたるフロア)が公開された。

 5/24・25は東京大学の五月祭もあったので、キャンパス内の理学部2号館や東大からそう遠くない鳳明館本館(どちらも特別公開)に行く手もあったが、鳳明館の方は当日7時から受付が始まる時間帯別「順番待ち」予約が必要で、正に7時にその画面にアクセスしたものの1分以内に定員に達してしまい、やむなく断念。特別公開系イベントの人気の高さを思い知ることになった。仮に東大と鳳明館に出かけていたら、神保町の方はせいぜい1~2か所。結果オーライだった(と思う)。


招待

 JR東海の「EXサービス会員」になって5月で一年が経過。同会員向けに「国立競技場へ遊びに行こう! 5/25広島戦250組500名様ご招待」なるものがあり、その案内が来たのでとりあえず申し込んでみた。競争率がどの程度だったのかは知らないが、これが当選。Jリーグの試合観戦は覚えている限りでは過去に二度なので、5/25で三度目になる。対戦カードは「FC東京 vs サンフレッチェ広島」。どちらを応援するでもない筆者は、試合云々よりも新しくなった国立競技場の方が関心事だった。

新しくなった国立競技場に入場したのは今回が初めて。建築物としては圧巻だと思う。
大屋根はあっても晴れれば日射しはそれなり。「熱中症にご注意ください!」と出るのもごもっとも。
熱中症の注意喚起に反するように、グランドでは火炎放射的な演出が。FC東京=東京ガスならではなのかも知れないが、ここまでやる必要があるのかどうか…

 サポーターの応援の熱量・声量に圧倒されつつも、競技場のスケール感や構造等は概ね把握。招待枠の席はグランドに近いという点では好条件だったが、音が集まるという点ではマイナスに働き、推定100db超の中での観戦は正直堪えた。という訳で席にいたのは前半限り。後半は場内の見学がてら通路から何となく観させてもらった。不思議と応援絡みの轟音は抑えめ。次に来る機会があれば音に悩まされずに済むエリアがいいと思った(そういう構造になっていればの話だが)。

前半は0-0だったが、後半に入ると4分、14分と続けて広島が得点。43分にも追加点が入ったが、その時点ではすでに場外。早めに駅に向かった。
国立競技場に来たら見ておきたいのがこちら。たまたまだったが「聖火台」(一部)を目にすることができ、しばらく足止め状態に。燃焼機構と可動機構を再度取り付ければ本来の聖火台になる。

 ちなみに、ご招待時の案内には「明治安田Jリーグの国立競技場で開催される試合を『THE国立DAY』と呼称し、2025シーズンはJ1リーグ9試合、J2リーグ1試合の計10試合を開催します。特別な場所で、特別な興奮を。数々のドラマが生まれた聖地・国立での試合観戦をぜひご体験ください。」とあって、「特別」が強調されていた。試合の方は「0対3」で広島の勝ち。「特別な興奮」というのは少々大げさな観もあるが、勝ったチームとそのサポーターには当てはまるのだろうと思う。

木材を多用するのが隈研吾流。真に適した材料が使われていれば易々と劣化することはない筈だが、そうではないケースがあったようで同氏の設計が疑問視される向きも。国立競技場は果たして…

乗船

 国土交通省関東地方整備局の目玉の一つ「あらかわ号」。第217話で綴った乗船レポート当時は巡視船だったが、いつしか趣旨が変わったようで災害対策支援船に。とは言え船体は同じなので、その姿を目にした時はどこか懐かしさすら感じた。

 荒川知水資料館での「青山士記念講座」全9回のうち、7回(3/9)と8回(4/27)を受ければ、9回目の「あらかわ号」船内での講座に参加できるということで、二人してその2回分を受講。「登録票」を手に晴れて乗船する機会を得、5/27に岩淵リバーステーションから荒川ロックゲートまでの約18.5kmを船で移動した。講座主体ではあるが、船に揺られていれば遊覧要素は付いてくる。前回は「かつしかハープ橋」(河口から7km地点)付近での折り返しだったので、その先の4.5kmほどは初体験。スカイツリーも当時はなかったし、ロックゲートの方は間近で見物したことはあっても船で通過するのは初・・・とにかく見るもの撮るものが多く、特別な乗船体験となった。

乗船したのは21km地点。そこから500mほど下ると右岸に北清掃工場(解体工事中)が見えてくる。直線距離で約1.4km離れている上、船からの目線なので上半分側のみ。これと同じような見え方は後で出てくるスカイツリーでも。
手前、奥と二つのアーチ橋が続く。順に、首都高速の五色桜大橋、道路橋の江北橋。河口から17km付近にある。こうした眺めは船窓ならでは。
河口から13km地点(西新井橋と千住新橋の間)で撮った東京スカイツリー。直線距離で約5.6kmと決して近くはないが、3分の1が隠れる程度・・・やはり高い。
京成本線荒川橋梁。かつての堤防の高さで架橋したため、かさ上げ後の現在の堤防よりも約3.7m低くなっているのがポイントであり課題。架け替え工事が予定されているが、工期等は不明。
10km地点(堀切付近)。スカイツリーはこの通りほぼ全体像。距離は約3.7km。
河口から7km。2006年の乗船体験ではこの辺りで折り返した。三つの区(葛飾区、墨田区、江戸川区)の境界付近でもあり、スカイツリーまでは約3km。スカイツリー下部に重なる建物は都営アパート。右隣は墨田清掃工場の煙突。
荒川ロックゲートに向け、進路を変える「あらかわ号」。「入門」シーンが見学できるというので、デッキに移動し撮影。
いよいよゲートへ。奥に進むと旧中川。閘門内で荒川と旧中川との水位の差を調整した後、旧中川側のゲートを開ける。標準的な通過時間は約20分。
荒川側のゲートを通過。信号部の文字表示は「一時待機」から「ゲート稼働中」に変わり、少しずつ閉門。開閉速度は1分間に10m=日本最速クラスなのだとか。
ゲートが沈下し、「ゲート稼働中」から「水位調整中」に。稼働シーンは動画でも撮ったが、とにかく見応えがあった。
旧中川に入りしばし北上。小名木川との合流地点(番所橋付近)で下船、解散。帰りは都営新宿線の東大島駅まで歩くか、近くの停留所から都バスに乗って亀戸駅などに出るかだった。

 来年も参加したいところだが、回数制限等があるとかないとか。あくまで機会があれば…の話になりそうだ。


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