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第582話 どこでもきっぷの旅(2021.12.2)

 北陸新幹線の「お先にトクだ値スペシャル」が設定されたのを受け、11月に富山方面の旅をしようと前々から計画していたところ、JR西日本が2020年に続き大盤振る舞い系の企画乗車券「どこでもきっぷ」を発売するとの報を得て、どうせなら長旅に出ようと思い至る。

 今回の企画乗車券は前回の「どこでもドアきっぷ」に比べると割高感はあるが、それでもおトクはおトク。3日間用はJR西日本エリア(山陽新幹線:新大阪~博多を含む)全域が対象で1人22,000円・・・新幹線だと新大阪~徳山を1往復しただけで元が取れるのだから使わない手はない。

 11/20を起点にした場合、11/22の月曜を休めば4連休になる。50%割引の北陸新幹線でJR西日本エリアに到達し、その先は「どこでもきっぷ」にバトンタッチする場合、往路か復路で1日を移動日に充てれば程よい旅が可能。初日で一気にJR西日本エリアを横断する勢いで利用し、11/22は宇奈月温泉辺りで泊まり、最終日はゆっくり北陸新幹線で帰るのがよさそうということになって、旅程を組む。あとは「えきねっと」で事前予約をし、その結果を待つばかりだったのだが…

 11/20早朝、11/23夕刻の新幹線は事前予約で臨んだにもかかわらず「不成立」。4連休の競争率は思いのほか高かった。その不成立のEメール連絡を確認後、予定を練り直し、11/20の方は前日の11/19朝の「かがやき」で富山入りし、その日は富山市内をメインに過ごすプランに変更。11/23の方はその日の夜の遅い時間帯の列車を30%割引で押さえていたが、10/28に臨時の「かがやき」が設定される旨を知り、予約受付が始まった10/29早朝に申し込み、その一本を無事確保。最終日の帰宅が深夜に近いというのはやはり避けたい。程よい時間に帰途につく目処が立ち、ありがたいことと言ったらなかった。

 かくして、旅の日程は11/19~23の4泊5日に。北陸新幹線の往復は期せずして両方とも速達列車「かがやき」になった。「どこでもきっぷ」の方は、枚数制限などは特になかったので3日間用(11/20~22)を難なく「e5489」で購入。時節柄、運休扱いになっていた特急、新幹線を外す形で行程を組み立てた上で、指定席6回分についても一応押さえることができた。

 旅に出る前に、トランクルーム作業は一定の段取りを済ませ、散髪に行き、取れてしまった歯の詰め物も直した。準備を整えて臨んだ11月の旅。以下、行程順にそのダイジェストなどを紹介する。


11月19日(金) 富山地鉄の一日

 「かがやき」はやはり速い。もともと朝早めの列車でそれが速いとなれば富山にも当然早々に着く訳で、到着時刻は9時半。富山をたっぷり満喫できるという話である。

大宮から1時間45分で富山に到着。「かがやき」は速かった。
元「レッドアロー」と元東急の車両が並ぶ。タイムスリップした感覚が楽しめるのが富山地鉄の醍醐味。

 フリーきっぷの出番だが、平日だと選択肢が限られる。富山地方鉄道をそこそこの範囲で乗り降り自由な「地鉄観光列車フリーきっぷ」を買い、フリーエリアを可能な限り隅々まで周遊することができた。富山県には日本一小さな村、舟橋村がある。その村にある唯一の駅、越中舟橋に行ったり、路面電車(市内線)の電停で、名称が日本一長い「トヨタモビリティ富山 Gスクエア五福前」を訪ねたりといった具合。新たに乗降した富山地鉄の駅は、鉄道線が9駅、市内線が10駅(電停)となり、成果としては上々だった。

舟橋村にあるただ一つの駅「越中舟橋」
駅前には「日本一ちっちゃな舟橋村」の看板が
午後3時からは路面電車(市内線)の乗り降り旅。岩瀬浜方面の路線はかつて「富山ライトレール」だったが、2020年3月21日に富山駅への乗り入れと南富山駅前方面などへの直通運転が始まった。この「南北接続」に先行して、ライトレールは富山地方鉄道に吸収合併。経営一体化により、運賃は全線均一になった。
富山駅の南側から岩瀬浜行きの列車が入線。南北接続により行先や系統のバリエーションが増え、便利になった。
噂の「トヨタモビリティ富山 Gスクエア五福前」電停。カッコ表記の(五福末広町)を入れるとさらに長くなる。

 この日の富山の最高気温は20.7℃で、暑いくらい。基本的に晴れで、夜は富山駅前で部分月食を観賞することができた。


11月20日(土) 龍野の約2時間

 「どこでもきっぷ」初日は、富山~金沢~新大阪~姫路を新幹線、特急、新幹線で乗り継いで中国エリアをめざす。姫路からはローカル線の旅。姫新線に乗り、途中の本竜野で降り、龍野の街を散策した。歴史的景観が残る街(→)という括りで言うと、近年では、筑後吉井(福岡県)、黒石(青森県)、有松(愛知県)、内子(愛媛県)、佐原(千葉県)、越前大野(福井県)、飫肥(宮崎県)などを訪ねているが、龍野もそうした一つ。「重要伝統的建造物群保存地区」にあたるエリアで約2時間を過ごした。

お世話になった「どこでもきっぷ」。2020年の「どこでもドアきっぷ」は二人同一行程が条件だったが、今回は一人一枚の利用が可。
金沢から「サンダーバード」で新大阪へ。3分遅れだったが、次に乗る「のぞみ」は12:50発だったので、あわてることはなかった。
姫新線の列車。姫路から同線に乗るのはこれが初めて。 姫新線は、新幹線ホームから最も離れた番線から出るが、4分という短時間ながら何とか乗り換えできた。(13:19着-23発)
本竜野駅。山陽本線には竜野駅があるが、「龍野」に近いのは姫新線の本竜野。
ご当地名物などをデザインした停車駅案内。沿線高校のデザイン科の生徒さんの協力を受けて作ったのだとか。本竜野はもちろん醤油。

 建造物や町並みもさることながら、当地で名高いのは淡口(うすくち)醤油。ヒガシマルの「うすくち龍野醤油資料館」は、製造工程に沿って順路が設けられ、各工程で実際に使われた道具類が並ぶなかなかの趣向。早足での見物だったが、時間があればいくらでも過ごせそうな資料館だった。入館料は10円。おすすめである。

下川原商店街。商家町らしい建築が続く。注目ポイントは、格子、虫籠窓、漆喰枠など。
大正ロマン館。洋館、工場ともに国の登録有形文化財。
うすくち龍野醤油資料館。こちらも登録有形文化財。
原料(大豆、小麦、米、塩)の加工と処理から、麹室、仕込蔵、圧搾場など、ここにあるフローの現物を見学できる。

 姫路と新見を結ぶ姫新線。新見~津山は乗車済みにつき、残る姫路~津山をクリアするというテーマもあって、本竜野からは播磨新宮、佐用で乗り換えつつ津山に向かった。夏場ならまだ明るいところ、11月ともなれば日が暮れるのは早い。佐用から先はすっかり夜モードになってしまったが、何はともあれ津山到着を以って姫新線完乗となった。


11月21日(日) 津山まなびの鉄道館、門司港レトロ

 この日は「津山城もみじまつり」の最終日。知っていればまた違う展開になったかも知れないが、筆者としては津山=鉄道で、「津山まなびの鉄道館」に行くことにしていた。開館時間にあわせて現地へ。朝からの霧がまだ残る中だったが、まだ人出が少なかったこともあって、まずは車庫から顔を出す車両を存分に見物、撮影。コンパクトな施設なので、まなびルーム、まちなみルーム、あゆみルーム、しくみルームを行きつ戻りつしてもそれほど歩数が増えることはなく、それぞれ堪能できた。

津山駅前。霧がかったSL「C11-80」の姿がなかなか幻想的。後方は今回宿泊したホテル。
津山まなびの鉄道館、転車台など。C57-68の動輪が来館者を迎える。9時を回っていたが、霧はまだ濃かった。
扇形機関車庫に並ぶ気動車など。左から、キハ33、キハ181、キハ58、キハ28、キハ52、D51-2。いずれも手入れが行き届いていてピカピカだった。
こちらはディーゼル機関車など。左から、DF50-18、DD13-638、DD15形除雪用ディーゼル機関車、DD51-1187、10t貨車移動機、DE50-1。DE50はこの1両のみ製造されたということなので、かなりレア。
9時40分頃。ようやく霧が晴れ、車両の色も鮮やかに。
転車台にはDD16-304が留置中。この日は高所作業車による「スカイビューイング」(1回200円)も行われ、朝から人気だった。
2時間近く過ごして鉄道館を後にする。すっかりいい天気になっていた。

 旧施設をリニューアルし、鉄道館としてオープンしたのは2016年4月。2021年は5周年にあたる。節目の年に来れたのはよかったと思う。

 津山からは、快速「ことぶき」で岡山へ行き、短時間の乗り換えで新幹線に乗車。小倉に向かった。駅近のホテルで荷物を預け、門司港へ。15時頃に着いたが、ここで思いがけない列車と遭遇することになる。JR九州が誇る観光列車「かわせみ やませみ」と「いさぶろう・しんぺい」を連結した4両編成が5番線に姿を見せ、発車までの間、車内見学イベント状態に。そうそうお目にかかれない列車なので、実に得難く、ありがたい限りだった。10分ほど見させてもらい、発車を見送る。門司港15:19発の博多行き「かわせみ やませみ」91号+「いさぶろう」91号だった。

「いさぶろう・しんぺい」を先頭に入線。観光列車が来たとあって、この後は結構な人出に。
博多方面の先頭は青の「かわせみ」。その後ろに緑の「やませみ」が続く。
「やませみ」車内のソファー席。次はぜひ乗車体験してみたいものだと思う。

 そんなおまけがあったため、門司港駅を出る時間が予定よりも押し気味に。門司港レトロに関係する各建築物の開館時間は17時までというのが基本につき、とにかく急ぐ。九州鉄道記念館を入口付近で見物した後は、ガス灯通りを経て、旧門司税関、大連友好記念館、旧大阪商船、旧門司三井倶楽部の順に何とか巡る。一巡して海峡プラザでひと休みしていると、17時台に刻々と空の色が変化し始め、17時半にはすっかりライトアップが目立つ暗さに。そのうち雨も降り始め、持参していた折り畳み傘では役に立たないくらいの本降りになる。門司港観光はこれにて終了。早めにホテルに戻ることになった。

門司港に来たら外せないのが「九州鉄道記念館」。今回は時間の都合もあり入口付近の見学のみ。
親水広場から見た門司港駅(中央)。左の大きな建物が旧門司三井倶楽部、右の洋館が旧大阪商船。三つをまとめて撮れる場所は案外限られている。
大連友好記念館。キャンドルイベント用の仕掛けが並んでいた。(雨でどうなったかは不明) 後方は門司港レトロ展望室があるタワービル。展望室には夜に行くつもりだったが、大雨により見送り。
レトロ中央通り沿いで見つけた路面電車、西鉄北九州線の100型。1940年製で、1985年に引退。何だかんだでこの日も鉄道三昧に。
左から、タワービル、大連友好記念館、旧門司税関。16時半頃はまだ明るかった。
17時半に近づくとこんな感じ。イルミネーションイベント「門司港レトロ浪漫灯彩」もいつしか始まっていた。
青を基調とした光景が実に印象的。雨雲もいい色合いだった。
旧三井倶楽部。1階はレストランで、事前に予約を入れる手筈だったが、あいにく貸切につき叶わず。
ライトアップが美しい門司港駅。駅舎は、旧三井倶楽部とともに国の重要文化財に指定されている。

11月22日(月) 小倉→宇奈月温泉924km

 「どこでもきっぷ」3日目。最終日につき、フリーエリアの端の方に移動しておく必要があるため、この日は観光要素はなく、ひたすら東に向かう。小倉から「みずほ」、新大阪から「サンダーバード」、金沢から「はくたか」と乗り継ぎ、黒部宇奈月温泉へ。「どこでもきっぷ」はここでお役御免となる。当の宇奈月温泉には、新幹線駅に接続する富山地鉄に乗り換えて約25分。移動の旅はそこで終了と相成った。小倉~宇奈月温泉は距離にして実に924km。大移動だった。

金沢行き特急「サンダーバード」。北陸新幹線が敦賀まで延びると、サンダーバードの運転区間が変わる可能性は大。この手の表示を撮れるのも今のうち。
加賀温泉駅ではこの雨量。北陸新幹線の駅舎はすでにできていて、記念に一枚と思ったがこれでは…

 移動主体なのでよかったが、天気の方はあいにくで、特に北陸本線を走っている辺りは大雨だった。宇奈月温泉に向かう途中も結構な雨で、車窓も曇りがち。宇奈月温泉駅到着時には豪雨の様相で、駅の外に下手に出られない状況だった。駅周辺を散歩がてら宿に行くプランも立てていたが、とてもとても。送迎サービスがなければどうなっていたかと思う。

「はくたか」車内でテロップが流れる。後続の「サンダーバード」が強風下の湖西線を通れず、米原経由になったというので吃驚だった。筆者らが乗ったのは新大阪11:46発の19号。金沢方面の経路変更対象は、大阪13:42発の25号以降とのことだった。2時間ずれていたらとんだ番狂わせになるところだった。
新幹線から富山地鉄に乗り換えて宇奈月温泉へ。11/19とは打って変わって、雨の中の地鉄乗車となった。
宇奈月温泉駅前。駅舎の屋根からの雨が滝のように注ぎ、呆気にとられる。温泉噴水よりもインパクト大だった。
21時時点で降水量は落ち着いてきたが、24時間雨量が凄いことに。16~18時台が特に激しかったようだ。

 宿に着いてからは温泉と食事などでゆったり。雨の方は相変わらずで、宇奈月エリアの24時間降水量は80mm近くになっていた。


11月23日(祝) 雨と虹と「くろワンきっぷ」

 黒部市内の電車、コミュニティバスがワンコイン(500円)で乗り降り自由という「くろワンきっぷ」が使える日。帰りの新幹線の時間までそのきっぷを前提にした行程で動く。

「くろワンきっぷ」。30回目の設定で、11/23はシーズン最終利用日だった。
「くろワンきっぷ」発売を記念して、富山地鉄ではヘッドマークつきの列車が運行。

 朝は晴れ間も見られたが、宇奈月温泉駅周辺で過ごす間、富山地鉄で移動している間は小雨。道の駅「うなづき」を訪ねるべく、最寄りの下立で下車した際はそれなりの雨だった。道の駅には、宇奈月麦酒館、うなづき食菜館があり、黒部市歴史民俗資料館などが隣接。「くろワンきっぷ」の提示で資料館は入館無料になるとのことで、ありがたく見学させてもらった。橋や黒部峡谷に関する展示など見るものは多く、同館には1時間近く滞在。その間一時的に青空が広がった。その後、麦酒館のレストランで「宇奈月ビールカレー」をいただき、下立から再び地鉄電車に乗車。晴れたり降ったりの中を行きつ戻りつし、最終的に電鉄黒部で降りた。八心大市比古神社などを散策していると天気雨の状態になり、空を見上げると鮮やかな虹が出現。いいタイミングで街歩きしていたものだと思う。

歴史民俗資料館、宇奈月麦酒館、うなづき食菜館など。三館合計で2時間近くを過ごした。

 地鉄の電鉄黒部から、あいの風とやま鉄道の黒部へはコミュニティバスで移動。ここまでの交通費はすべて「くろワンきっぷ」持ち・・・大活躍の一枚だった。富山に着いたら「かがやき」に乗って帰るばかり。黒部→富山の途中、富山駅周辺、「かがやき」乗車後しばらくはいずれも大雨だったが、帰りの話なので特段の支障はなく、天気の巡り合わせとしてはまずまずだったと言える。

電鉄黒部駅付近で虹を観賞(15時半頃)
新幹線発車時刻まで富山駅周辺をぶらり。雨が強かったため、正面の「CiC」などには地下通路経由で向かった。

 富山は11/22~27の間、雨が基調だった模様。11/19~23に旅ができたのは幸運だったと思う。


*旅の概略はこんなところで。駅の乗り降り記録の方は「駅ログ」に追い追い載せていきます。そちらもお楽しみに。

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