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第528話 八月、夏の祭り(2019.9.1)

 夏の一人旅で鉄道主体の場合、いかに長く列車に乗るか、いかに多くの駅で降りるかが近年のテーマゆえ、旅先での行事、催事はあくまでおまけのようなもの。だが、今夏の一人旅はいつもと趣を異にしていて、いわゆる“夏祭り”に不思議とご縁があった。それも一日に二つというのが二度。夏場はあちこちで大なり小なりの祭りが行われていて、たまたまそれらに当たったと見るのが正しいのかも知れないが、筆者としては一大トピックである。

 今回は、それらの夏祭り(または夏祭り的なもの)を順にご紹介する。

8月4日(日)

 福井県内の鉄道路線完乗をめざし、その最終行程に来た時の話。えちぜん鉄道の田原町に来て、そこから福井鉄道に乗り換えて福井駅まで行くつもりが、「福井フェニックスまつり」の会場展開の都合で、一部区間が不通!ということを現地で知る。(→参考

 最後に乗るべき区間は、福井鉄道の田原町~福井城址大名町で、それは何とか果たすことができたのでよかったのだが、当のまつりで不通となった福井城址大名町~福井駅の一区間が乗れなかったのが心残りではある。道路上を走る区間ならではの話だが、知らないで来た人にとっては驚きだろう。福井駅から福井鉄道に乗ることももちろん×。公共交通を止めずに済ませる会場の設け方というのを考えてほしいものだと思う。

「福井城址大名町~福井駅間 運休のお知らせ」@田原町駅・・・これと同じリリースは何となく見ていたが、まさか当日にあたるとは思いもよらず。
併用軌道にあたる「福井駅前電車通り」では、このようなステージイベント(夏まつり)が展開。これでは電車は走れない。
線路の両脇に出店が並ぶ。タイにもこれと同じような場所があるが、そちらは列車が通る度に店が一時的に休業するというスタイル。その名所(迷所?)は、「メークロン市場」という。

 フェニックスまつりのおかげで、路面に敷かれた線路を白昼堂々歩くという得難い体験はできた。まつりそのものの方は、暑さピークの時間帯だったこともあり、ざっと眺める程度。この日の福井は猛暑日手前、最高気温は34.9℃だった。

 福井鉄道のダイヤ変更を受け、予定していたスケジュールが変わり、明るいうちにホテルに向かうことになった。めざしていた区間や駅をパスしたことで、逆に時間的な余裕ができ、ホテルからそう遠くない多賀大社にはちょうどいい時間に到着。境内を覆うばかりの提灯が点り始めた頃合いで、実に壮観かつ美麗だった。この日は「万灯祭」(まんとうさい)の中日。人出は多かったが、提灯の数はおそらくそれよりも多く、正しく万灯の世界が広がる。気持ちの安らぐ佳いお祭りだと思う。

近江鉄道の多賀大社前駅、駅前の様子。この光景だけ見ても、夏祭りの風情たっぷり。
自転車を押して、多賀大社の前へ。提灯のただならぬ数に圧倒される。
能舞殿では、神楽の奉納も。
暗さが増すにつれ、提灯が際立ってくる。
どこを撮っても画になる万の灯。
駅前から多賀大社に向け、多賀音頭の総おどりもスタート。こちらも「日本の夏」ならではの趣を感じた。

8月25日(日)

 もともとは上越新幹線が半額!というのに乗せられて、1泊2日の旅を考えたのがきっかけ。宮城県、山形県、新潟県と巡る中で、乗ったことのない路線を組み入れるプランを思いつき行程を練るも、ローカル線はそううまくはつながらない。折りよく、「みのり新庄まつり号」というのが走る日だったので、これを軸にしたら、全体的にいい具合になった。一つの列車で長距離を移動することになるので、宮城県での未乗区間をこなすというテーマは持ち越しに。その代わり、まだどの区間も乗ったことがなかった陸羽東線については、この「みのり新庄まつり号」で一気にクリアできた。ありがたい臨時列車だと思う。

「みのり新庄まつり号」@仙台駅。こうした横断幕でのお見送りがあるのも臨時列車ならでは。
ジョイフルトレイン「リゾートみのり」。陸羽東線も初めてなら、この列車に乗ったのも初めて。仙台9:13発で、新庄には12:26着。道中は快適だった。

 従って、まつりがメインというよりは、乗った列車名を通じて「新庄まつり」というのが開かれるというのを知った次第。次に乗る列車は奥羽本線(山形線)で、発車は14:18だった。新庄での滞在時間は2時間を切るくらい・・・まつりを存分に楽しむのであれば足りない観はあるが、筆者としては十分な線。臨時列車の車内で配られた「リゾートみのり乗車証明書」(ポストカード)に、車内限定のスタンプを押し、それを新庄駅構内の「もがみ情報案内センター」で提示すると、レンタサイクルが無料というのもあっての読みだった。自転車、ありがたい話だが、果たして「本まつり」の当日に通用するものなのか? とにかく、自転車でまつりの只中へ。会場地図を頼りに、山車や神輿の待機場所をめざした。

山車はこんな感じ。新庄駅構内でこれを見た時は少なからず衝撃を受けた。(実物はもっと大きい!)
駅前通りに面した一角に「美食広場」というのが設営されていて、そこで軽く一食。「とりもつバーガー」(350円)をいただいた。まぁまぁだった。
こちらが実物の山車。いくつか撮った中で、動物をダイナミックに使っているという点でイチ押し。
と、こんな感じで山車の隊列が続く。待機中でも迫力満点。

 が、地図がどうにもおかしい。方向感覚が狂う上、道路の交わり方や進み方が何か違う。さんざ迷って、南部ブロックの山車にお目にかかれたのは出発する20分前だった。概ね雰囲気はわかったので、次は神輿渡御の列が控える場所へ。だが、これが本当にわからず、それらしい行列を見つけたのは出発後10分近く経ってから。最後尾を辛うじて見物、撮影し、駅に戻った。

神輿の巡行、山車の運行を示す案内図。北を上にして、主な通りは東西を直線で結ぶ書き方になっているが…
こちらが実際の地図。東西を結ぶ駅前通りは傾いていて、案内図に「本町通り」と記されている道路も斜めになっている。方向の感覚が狂う訳である。川や中央公園を落とし込んでもらうだけでも違ってくると思われる。
13:45出発の神輿渡御の行列は、見つけた時には最後尾。この人出の中を自転車で追う訳にも行かず、ここで見送って駅に戻った。

 「新庄まつり」は、ユネスコ無形文化遺産の一つ。訪日外国人客も少なからず訪れたことだろう。誰が見てもわかる、より正確な案内図を作ってほしいものだと思う。何はともあれ、自転車があってよかった。徒歩で探し回っていたら、山車も神輿もなかった可能性は高い。暑い中での熱いお祭りだったが、筆者としてはヒヤヒヤものだったのである。

 この日のメインイベントを終え、山形線を行ったり来たりする中で、もう一つの祭りに行き当たる。神町から村山に向かう際、何やら祭りの参加者らしき一行がゾロゾロと乗って来たと思ったら、村山で挙って下車。「むらやま徳内まつり」の一団だった。

村山駅西口。駐車場と駅を往復するシャトルバスが発着していた。
東口に来たら、大きな山車が動いていてビックリ! 「徳内ばやし」では、山車と踊り手が一緒に練り歩くのだとか。

 駅を出て、東口を見渡したらこの通り。総じて勇ましい印象だが、筆者としては苦手なジャンル… 万灯祭のような祭りに心惹かれるのは、年のせいだろうか。


 十月以降は、秋の臨時列車(→参考)が花盛り。秋祭りにあわせて運行する列車も少なくない。列車名を参考に、祭り見物に行くのもいいかも知れない。

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