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第610話 晩冬の季語にちなんで(2023.2.1)

 2月の旅を模索していたら全国旅行支援が再開され、どうせ行くならその恩恵に与ろうということになり、より確実に適用対象となる期間にシフトした。旅程は1/26~29の3泊4日。パッケージだったが、1泊目を「不泊」扱いにできるので少々変則的な旅になる。

 滞在先は1/26~27が富山で、27~29は高山。最強寒波だ大雪だというのはたまたま重なっただけで、交通機関がどうにもならない限りはとにかく行くだけ。降るには降ったが、列車をシャットアウトするレベルには幸い至らなかったため、概ね予定通り行って帰って来ることができた。

 パッケージで用意してもらった乗車券・特急券は、東京~名古屋の「のぞみ」、名古屋~高山の特急「ひだ」のそれぞれ往復分。高山~富山は自費になるが、全国旅行支援の富山県、岐阜県の両県分があるので十分に元は取れる。筆者としては、高山本線の未乗区間だった高山~越中八尾(72.3km)を晴れてクリアできたという点でも有意義。我ながらいい行程が組めたと思っている。

 という訳で今回は「高山本線&富山・高山の旅」のレビューなどを・・・と普段なら行くところ、実のところ降雪&極寒の影響は少なくなく、存分に観光等できたかと言えば決してそうとは言えず、あれこれ綴るほどではないような(そうでもないような)… で思いついたのが季語。小寒から立春の前日まで(1/6~2/3)を晩冬とするなら、旅で見かけたり体感したりしたのはその時候の季語となり、関係するネタはいくらでも出てくる。

 季語別、画像メインでそれらを紹介しようと思う。


1/26、往路の特急「ひだ」車窓(進行方向左)。飛騨川河畔にある久々野発電所付近では、川に氷が漂っているのが見え、思わず息を呑む。
久々野の手前で飛騨川と離れ、「宮トンネル」(久々野~飛騨一ノ宮)を抜けると今度は宮川沿い。北に進むほど雪が深くなり、川もこの通り。氷なのか雪なのか判別がつかない。(飛騨細江~角川)
特急「ひだ」車窓からの宮川(角川~坂上)。川幅が広く、氷雪が浮いていたり、水面に樹氷が映っていたりとさまざま。

樹氷

宮川(角川~坂上)の眺め。坂上ダム下流部にあたるが、こちらの川幅は狭め。雪が基調だが、これぞ樹氷という一枚が撮れた。
宮川は岐阜県、富山県の境界辺りから神通川に名を変える。そして、富山県に入った最初の駅、猪谷を過ぎると「神通峡」が見えてくる。写真はその南端辺り。この辺りの樹氷も綺麗だった。
峡谷と反対側(進行方向左)、猪谷川を望む。川は雪に埋もれ、河畔の木々も真っ白。

氷柱

1/29、飛騨国分寺境内で見かけた見事な氷柱。東京ではまずお目にかかれないので、感慨深いものがある。
国分寺通り、鍛冶橋、宮川朝市を経由して、日下部民藝館界隈へ。軒下の氷柱にふと足が止まる。杉玉を提げた左奥の一軒は、重要文化財の吉島家住宅。
1/29は主に「飛騨の里」で過ごす。こちらの「旧西岡家」は茅葺き、合掌造りの4階建て。屋根の高さ、傾斜に比例するように氷柱も長々としている。

氷湖

「飛騨の里」の園内には大きな池(五阿弥池)があり、氷点下となれば大部分が凍結。氷湖というより氷池だが、大差はないと思われる。

1/26、打保を通過後の雪景色。県境に近い一帯はやはり積雪量が違う。次の特急停車駅、猪谷まではあと10分余り。
1/27、15時頃の富山駅前。市街地を観光している間は雪に降られずに済んだが、高山に向けて移動を始めると俄かに雪が降り出し、この通り。雪は高山本線に乗っている間、激しさを増していく。
1/27、高山への道中、越中八尾で特急と行き違う。こちらの特急「ひだ」11号は越中八尾16:25発のところ、雪の影響か4~5分遅れ。遅れていたおかげで、しっかり待機して動画を撮ることができたのは大きい。この特急形気動車「キハ85系」は、3月のダイヤ改正を以って定期列車での運行を終える。
猪谷の一つ前、楡原。雪の深さにただただ吃驚。
1/29、飛騨国分寺の前にある「さるぼぼ」関係のあれこれ。お堂の屋根に積もった雪が今にも落ちそうだが、これがなかなか落ちない。
1/29、「飛騨の里」の和紙漉小屋。傾斜が緩い分、雪がしっかり積み重なり、重量感たっぷり。小屋と言えど、その豪雪に耐える構造になっているところがまた凄い。

雪掻

1/28、ラテアートが楽しめる茶寮で小休憩。店を出ると接客してくれた店員さんが慣れた様子で雪かき中だった。素手でスコップを扱うあたり、流石だと思う。

雪達磨

「飛騨の里」に入ってすぐ、本来ならダルマ体形のトトロが築山のような体で来園者を迎える。「雪達磨」とは言い難いが、当たらずも遠からず?

 右の写真は雪達磨というよりは、雪を使って水鳥を模したもの。季語にあてはめるなら「雪遊」か。

1/28、宮川に架かる「中橋」を歩いていて見つけた水鳥ならぬ雪鳥。雪だるまをアレンジすればできそうだが、ちょっとしたコツが要りそう。

雪吊

1/28、高山陣屋前で撮った「雪吊」の木々。こうした工夫がないと、雪で枝が折れてしまうのが何となくわかる。(「陣屋前朝市」がそろそろ片付けに入る時間に撮影)

雪踏

1/26、ホテル近くの桜橋の様子。クルマが通ればそれも「雪踏」になる。橋は路面電車も行き来するが、雪を踏むというよりは雪を散らす感覚が近いと思う。
1/27、普通列車で猪谷から高山に向かう途中、5分の停車時間があった坂上で一旦ホームへ。先頭の運転席側の扉から降り、1両目の後方扉から乗車。積雪した中を歩けば「雪踏」の跡が残る。

吹雪

1/26、ホテル客室から撮った富山地鉄の市内電車(環状線)。17時台の雪は激しく、時に吹雪の様相。おかげで散歩も何もなく、行き交う路面電車を眺めて過ごした。
1/27、大雪の中、高山に到着。猪谷で乗り換えたこの普通列車は美濃太田行き。あとから来る特急の発車を待つため、高山での停車時間は27分と長め。

「飛騨の里」内の「旧八月一日家」はソリの展示がメイン。屋内には、手ゾリ、源平ゾリ、ドタゾリ、大持ゾリ、馬ゾリなどが勢ぞろいで「橇」を堪能した。物流を支える道具と考えると、物流博物館ネタでもある。ちなみに八月一日と書いて「ほづみ」と読む。

その他

 晩冬の季語からは外れるが、風物詩的なものを二つ。行きの新幹線で見た富士山と、高山のホテルに向かう際に撮ったイルミネーション・・・「雪山」「電飾」が季語にあればその好例になるだろう。

走行中の新幹線車窓からこのようにバッチリ富士山が捉えられるとは… 我ながら驚きの一枚
1/27、19時前。飛騨信用組合(本部・本店営業部)のイルミネーション。雪が小降りになったところで何とか撮影。

 今回の旅、主なテーマは雪見か耐寒か。富山は1/26の最低気温が-4.0℃、最高気温は2.1℃、1/27は-0.1℃、3.3℃だった。高山はと言うと、最低気温、最高気温の順で、1/27が-3.8℃、1.3℃、1/28が-7.4℃、-0.8℃、1/29が-5.9℃、1.5℃。高山でまる1日を過ごした1/28は朝から晩まで氷点下だった訳で、かつてない体験となった。季語で例えるなら寒稽古といったところ。1/29に東京に帰ってきた時点での気温は3℃前後だったそうで、さんざ寒い中にいた身としては、全く以って余裕だった。

 寒い土地にあえて旅に出て、耐寒性を高めるのもアリ? 来年も検討してみようと思う。

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